アルフェラッツの傾慕【瀬名 泉】

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なんだか懐かしい。初めていずみ と呼んでくれたのはあの美術室。モナ・リザの目の前だった。




「 絵が出来たんだ〜！ 」



彼女は身を乗り出して叫ぶ。フェンスがあったからよかったものの、なかったら確実に危なかった。




「 授業に出ずに完成させた！だからもう、 」



「 ふざけないで！ 」



A。ねぇ、A。俺、あんたが言おうとしたこと、当ててあげようか。
“ もう私の側にいてくれなくても大丈夫 ”
そうなんでしょ。




「 とにかく今日は一緒に帰るからねぇ！ 」



「 は、はいっ！ 」



大きい声はあまり出したくなかったのに。直接会って話してもよかったのに。3のAの教室と、普通科の屋上が俺たちの距離を表してるみたいで、ちょっと笑えるね。ねぇ、笑ってよ。あんたの笑顔二週間も見てないんだから、こっちは気でも狂いそうなの。




「 A 」



どこに行ってたの、今まで。誰も陸上ができなくなったあんたを責めたりしないよ。どこに行ってたの。



「 おかえり 」



そう呟いた。彼女に聞こえてたか心配だったけれど。しっかり届いたのか、あの日見せた泣きそうな笑顔だ。



「 ただいま 」



おかえり、ただいま。この言葉だけで二週間を埋められた気がした。なんでかわからないけど、涙が出そう。




校舎の中に入ったようで、彼女がいなくなった屋上は空っぽ。
早く絵が見たい。早く彼女に会いたい。早く彼女に触れたい。



隣でニヤついている王さまの頭を叩く。
初めて彼女を見たときのようなバカになった！天才だけど！ という言葉はわざとなのだろうか。



ねぇ、Monna 。
今まで、どこにいたの。




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