夜半/5 ページ48
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「 __中也には分からないの?Aは自分を売ったんだよ 」
「 は…? 」
「 あの子はそういう子だからねえ、仕方がないかもしれないけど…少しやりすぎだ 」
「 テメェ、全部知ってて 」
「 私も気がついたのはつい先日だよ、その頃にはAは空の上だった 」
太宰は小屋の中に足を踏み入れていく。月が大きく落ちてきそうな夜だ。Qは其処で眠っていた。
「 彼奴の異能がどんどん強くなってきてる、このままだと食い潰されちまう 」
「 其れを抑えるための私だったけれど、生憎もうあの子の近くには居られないからねえ。中也、ナイフ貸して 」
中原は太宰の憂いを孕んだ横顔を見、気持ちを抑えてからベストを探った。
「 あ?確か… 」
「 あ、念の為さっきスっておいたんだっけ 」
「 テメェ! 」
「 行こうか、中也。私、Aに中也の外套拾ってあげてって頼まれてるんだよね 」
「 ……んだよそれ、彼奴なァ… 」
中原は川端を絶対に救い出して、気の済むまで怒鳴り罵ってやろうと決意した。彼女と同じ精神操作の異能を持つ幼子を背負うと、とても静かな体温。
( そう云えば、彼奴の指先もこんな冷たさだった )
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「 あー!繋がった繋がった、安吾久しぶりー!えー?私が今どこにいるのかって?くじらさんのお腹の中だけど……あ!あとフィッツジェラルドっていうおじさまが目の前にいます!……なんで呆れてるの!物怖じしないっていう褒め言葉として受け取るからね! 」
「 オルコット君、
「 いえ、しました…端末も取り上げた筈ですが…… 」
牢から出されたのはいいものの、“生態観察”としておじさまの前に引きずり出されるとは思わなかった。とりあえず私は自由にしてていいらしいので、こうして異能特務課の旧友、坂口安吾に電話をかけているという訳だ。だって牢で電話をかけてもどうせ監視されているならおじさまの前でかけるのも同じじゃない。
「 まあ安吾くんは事故に遭わされ……遭ってしまって怪我が痛いからねえ、無理強いはしないけど…出来るだけ早くお願いしたいんだよね、其れ。……うん、うん………………有難う、恩に着るよ 」
「 カワバタ君は自由だね 」
安吾との取引が終わって顔を上げると、おじさまは此方に向かって不敵な笑みを飛ばしている。
刹那、胸を後ろから打たれるような衝撃が走る。まずい、
「 __まあ、それも潰えるだろう。俺は、この白鯨をヨコハマに落とす 」
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ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» いつもありがとうございます、本当に励みになります、、!これからも何卒宜しくお願い申し上げます! (2018年4月2日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
イチゴプリン(プロフ) - ねむいさんの作る作品はとっても面白くて大好きです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年4月1日 13時) (レス) id: 645f74247e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2018年3月27日 16時