【あんスタ】また明日ね、ニュクス【合作短編集】 (ページ9)

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◇ ページ9

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　見えない。空が見えない。大嫌いな夜の闇に覆われていて見えない。明るいあの子は死んでしまった。
　彼の声がただの泡になる。何も聞こえない、届かない、受信しなくなった。

「私の宙(空)は、あなただけなのに、」

　決して死なない輝きを持った、私だけの空。あなたまで、私を殺したら、

　寒くて、寒くて、凍えそうだった。歯の根が合わない。ガチガチと鳴る自分自身の音さえ恐ろしくて、端から端までくまなく黒色の絵の具で塗り潰されていくようで、

　蝉が死んで、道路に落ちて、誰にも見向きもされない、そんな夏。暑くて冷たい夏の、

　お願いだから、そんなこと言わないで、あなただけは、

　フェードアウトもさせてくれない、ただの暗転。何の風情もなく、ぷつりと切れた。

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　空、宇宙、宙。どの「そら」を叫ぼうとしたのかはっきりしない。口を開けた瞬間、喉の筋肉が嘲笑うように引き攣ったから。

　藁にも縋るつもりで、何かを掴みたくて虚空に向かって手を伸ばしたつもりだったけれど、指先さえぴくりと動かない。

　息が凍りついて身体が冷たくなって、それと共にぐんぐんと落下速度が増していくのを肌で感じた。耳元の風切り音がいやに大きく聞こえて、ああ、このまま落ちて落ちて落ちて、地獄にでも行くのだろうか。それともぐしゃりと跡形も無く潰れるのだろうか。どの道、私はきっと死ぬ。走馬灯も見ていないのに死んでしまう。そんな確信めいた予感に目蓋をゆっくりと閉じて、それでも目の前の風景が変わらないことに辟易したそのとき

「HaHa～♪ 聴こえてますか、A！」

　私の中の藍色が、感じたことのない力強さで掴まれた。ぱちんと何かが弾けて、風が、吹き込んだ。

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