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「 なんで、都合がいいの? 」

「 あんたといると女が寄ってこないからさ〜?ほら、あんただって俺といると男が寄ってこないでしょ? 」

「 なるほど、それで都合がいい女と都合がいい男って訳か 」

「 あんたはそう思ってても俺は都合のいい女なんて言った覚えないけど? 」

「 えっばかじゃねーの言ったじゃん 」


小さい笑い声がおおきく響いていく。
彼女のぱつんと切られた毛先は少し跳ねていて、まわりの色気付いた女の子たちとは違う、垢抜けた雰囲気がまた、男を寄せ付ける。口も悪いし、性格もいいとは言えないのに、悔しながら俺もそのうちの一人にカウントされている。非常に無念だ。


「 凛月 」

「 んー? 」

「 ……なんでもない 」

「 はっきりしてよ 」


なんでもないってば、と目を逸らした彼女の頰に手を伸ばすと肩を揺らしてこちらに向き直る。校舎裏は日が当たらなくて、かといって真っ暗でもなくて、今の俺たちを表してるみたいだよねえ。

大人でもなくて、子供でもなくて、周りよりかは少しだけ大人に近くて、でも大人になりきれないからまだまだ子供で。周りからの期待とか感心とか、あやふやに誤魔化して生きていくんだ、ずっと。


「 ……誕生日って、いつなのかな、って 」

「 …は? 」

「 あーやっぱなんでもないってば!勇気出して聞いたんだからそんなは?とか言わなくても 」

「 ふふ、かわいいねえ 」

「 うっせ黙れ! 」

「 お口チャックしちゃうよ? 」

「 意味深なこというんじゃねー!もう帰る! 」

「 まだ二時間目の途中だけど 」

「 いいの! 」


立ち上がって埃を払って、ゆっくり歩いていく彼女を追いかけた。
…付いてくるなって言われても、あんた鞄置きっ放しなんだけど。


自分は、兄の進路希望と同じ、夢ノ咲に入ろうと思っていた。学力的には十分だけれど、出席日数とか考えると微妙かもしれない。勉強だって部活だって何もやる気が出なくて、人間関係だって家族と幼馴染と、それから彼女がいれば、それでいいかもしれないと思い始めていた。ついこの間、彼女に声をかけた日に迎えた誕生日は大人になるための第一歩だったけれど、大人になんてなりたくなくて、子供のままでもいたくなくて、ただ、隅に追いやられたこの関係だけを続けていく。誕生日プレゼントはそれで十分。


正門から堂々と出ていくと、潮の匂いがして、海に触れるこの街は随分と窮屈だ。雲が出て、風は出ていなくて、それでも煽られるように出した足はだんだん早くなっていく。



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フラッペ - ねむいさん» りっちゃんはいいですよね(^^)独特な雰囲気というか無気力で可愛らしいというか……でもライブではきちんとする所、好きです。更新の方は細かく繊細に書かれているのがねむいさんの作品の良いところですので、自分の思うがままに書いていただければ幸いです……♪ (2018年8月22日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - フラッペさん» ありがとうございます。フラッペさまからコメントをいただくたび、有難いという気持ちで胸がいっぱいになります。お気付きかとは思いますが、私も朔間凛月が一番の推しです。しかし推しほど書くのが難しい!精一杯尽くしていきたいと思いますのでよろしくお願いします! (2018年8月20日 10時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - 新作おめでとうございます(^^)推しのりっちゃんなのでとても嬉しいです……!!もう一話目で「好き」と口からポロりと出てしまいました。ホントにこの作品の続きがむちゃくちゃ気になります。ねむいさんの事応援してます♪ (2018年8月18日 21時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年8月15日 23時

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