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自分たちが存在しているということを証明するためにとんとんと態とらしく音を立てながら階段を登った。遠ざかっていく。耳に入る音はどこかで水が垂れている音と遠くで聞こえる雨音だ。部屋に着くまで、焼却炉に入れられたゴミのようにどろどろに溶けてきた体を保つために、彼女の手を力強く握っていた。
「 …… 」
「 …… 」
すっかり涙を乾かした彼女の、ブランド物のバッグから何もついていない鍵が取り出されてドアノブが回る。がちゃりと心地の良い音の、その先には暗闇が待っていたから、__________
「 __________おかえり、A 」
「 …私の、なま、え…… 」
暗闇の寸前で手を広げて、体温を閉じ込めた。
二人下がった温度はやけに気持ちが良くて、今まで見たことがないくらいに声を上げて泣き噦る彼女の背を、しばらく撫でていた。うええええ、とか、その他暴言、とりあえずなんでも受け止めるから、どうか暗闇に体を沈ませないで。ひかりの中に生きているべき人が、こんなところでは存在すら淘汰されてしまうだけだ。どうか、救わせて。たすけてほしいって、言って。
「 凛月、りつ、ぅ、凛月…! 」
「 うん、辛かったね、大変だったね 」
きっとそれだけで終わらせちゃいけないだなんてわかってる。俺が簡単に救えるようなものじゃないことだって、ぱつんと終わらせてしまうことだってできないだろう。けれど、俺、あんたのために何ができるのかな。教えてよ、全部。俺が知らないことまで、全部教えてよ。
「 頑張ったねぇ、 」
「 辛かった、どうしようもなく辛かった、消えちゃいたかった…!凛月、あんただけなの、私の中の 」
_____ひかり、は。
「 私、もうやだよ、こんなの。なんで、私何もしてないじゃん、何も悪いことしてないじゃん、誰も悪くないって、それなら誰のせいにすればいいのよ 」
悲痛な叫びに腕の力をより強くすると、その中で彼女は痛いと少しだけ笑った。ふわり、雨の匂いと一緒に香る香水はもうなんの花なのかわからない。
「 ねえ 」
「 ……なに 」
「 嫌なら辞めちゃいなよ、全部全部。辞めちゃって寝ちゃえばいいんだよ。これからは暗い部屋に帰らなくてもいいの、これからは俺が毎日おかえりって言ってあげる 」
「 仕事大好きなくせに 」
「 ハードスケジュールって言ってくれない? 」
あはは、と響いたのは他でもない、彼女の笑い声で、それでも胸の中にいるからその表情なんて見えなくて、でもきっと憑き物が落ちたような顔してるんだろうなあ。
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フラッペ - ねむいさん» りっちゃんはいいですよね(^^)独特な雰囲気というか無気力で可愛らしいというか……でもライブではきちんとする所、好きです。更新の方は細かく繊細に書かれているのがねむいさんの作品の良いところですので、自分の思うがままに書いていただければ幸いです……♪ (2018年8月22日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - フラッペさん» ありがとうございます。フラッペさまからコメントをいただくたび、有難いという気持ちで胸がいっぱいになります。お気付きかとは思いますが、私も朔間凛月が一番の推しです。しかし推しほど書くのが難しい!精一杯尽くしていきたいと思いますのでよろしくお願いします! (2018年8月20日 10時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - 新作おめでとうございます(^^)推しのりっちゃんなのでとても嬉しいです……!!もう一話目で「好き」と口からポロりと出てしまいました。ホントにこの作品の続きがむちゃくちゃ気になります。ねむいさんの事応援してます♪ (2018年8月18日 21時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月15日 23時