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更衣室から出ると、ソウタがニカッと笑ってAに近付き何も言わず手を差し伸べるから、思わず苦笑いが浮かんでしまう。
「ソウタ、大丈夫だよ。1人で歩ける」
「ダメ、それじゃ俺サボれないじゃん」
なんて返すからAは「仕方ないなぁ」なんて言いながらソウタの肩に支えられながら家まで送ってもらった。
「朝練休みだし、明日8時集合な。迎え行くから」
「えっ、いいよそんな、」
そう言って首を振るがソウタは「また明日な」と大きく手を振って走っていったからAは諦めるように息を吐いて肩の力を抜いた。
家に帰りAはベッドの上にゆっくりと腰を下ろした。
見えるのは右ひざに巻かれたテーピング。
真っ白いテーピングは確実に膝の負担を軽減し、尚且つ圧迫することは無い。
Aは右ひざをそっと右手で撫でた。
「何やってんだろ、私は」
そう口で言ってはみても、そのテーピングをなかなか外すことは出来なくて。
結局夜、お風呂に入るまで彼の名残を取り除くことは出来なかった。
翌朝、Aはベッドの中で右ひざの調子を確かめる。
動かせないことはない。
そんな感覚に身体を起こし、床に足を着く。
鈍い痛みはあるものの立ち上がることの出来たAは小さく息を吐いた。
スマホを見れば2件のメール。
1件目はマユから。
昨日の騒ぎを心配するような文面にAは『大丈夫だよ、今日ちゃんと学校にも行くから』と絵文字たっぷりに元気なメールを返した。
そして2件目は高橋先輩から。
今日から学校に来れるという内容にAは安堵の笑みを浮かべ、両手を天井に向け大きく伸びをした。
高橋先輩がいてくれるから大丈夫。
そんな安心感を胸にAは学校に行く支度を始めた。
マンションを出ると、入口の階段に座る制服姿。
「ソウタ?」
Aが声をかければ「よっ」と答え勢いよく立ち上がった。
「足の調子は?」
「うん、だいぶマシだよ。体育とかは無理だけど、普通に歩いたりなら問題ない」
「そっか、じゃあ俺が荷物持つよ」
「えっ?いいって!ちょっと、ソウタ!」
そう言ったところで止まらないのがソウタ。
Aのカバンを持つと彼はニカッと笑い「行こーぜ」と言うからAは仕方なく「うん」と答え彼の隣を歩いた。
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あいうえお - 解釈不一致なのに新しい道が開けたっていうか全て星様の文才によるものというか、ほんと面白いです、これからも応援してます!!!ジュノンくん最高!!!!! (5月23日 21時) (レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - 天才すぎます、ありがとうございます、読み続けます、、、、 (5月23日 21時) (レス) @page1 id: 4e657aa584 (このIDを非表示/違反報告)
れい(プロフ) - 最近の中で一番好きな夢小説です、! (5月22日 23時) (レス) @page35 id: 7c9597bb9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星 | 作成日時:2023年5月18日 20時