佰肆拾漆 ページ19
『……なぁ、そこに居るんだろう。彼等に全てを話したいんだ、構わないか?__葬儀屋……否、“リュヌ”』
「何もかもお見通しだねェ、菫ちゃんは。後、小生の名前知ってたんだね」
樫の扉付近に立っている柱から、ひょっこりと現れたリュヌに四人の表情が少し強ばった。
それもその筈__彼の右手には大鎌があったからだ。
特に太宰と作之助は、リュヌのその大鎌は唯の装飾品だと本人と私から聞かされていた為、情報と異なったこの状況に尚更気を抜ける筈が無かった。
いや、二人の事だ。
最初から装飾品では無く、武器として扱っている事ぐらい理解していただろう……
「何故葬儀屋が此処に?」
「真逆、Aを撃ったのは君なのかい?どうして……」
作之助、太宰の順でリュヌに話しかけるが、当の本人はそれを無視して私達の目の前で立ち止まった。
「ねェ、菫ちゃん。本当に君は非道いよ。何で彼等を救ってしまったんだい?何で
いつもの馬鹿馬鹿しくなる程の陽気さは一体何処に置いてきたんだと云いたくなるが、長い前髪の間から覗いた猩々緋色の瞳が悲しげに揺れているのを見て止めた。
その代わりに私は少し困ったように笑った。
『お前達なら……最初から、判っていたろう?……五分だけで、善い。彼等と、話を……させて、くれ』
じっと見詰めればリュヌは重々しい溜息を一つ吐き出して、渋々ながらも了承してくれた。
ありがとう、と彼に礼を告げようとすれば「でも」と彼は言葉を続ける。
「五分だけだからね。云っておくけど、その間も血は微量乍も流れ続ける。痛みもそのままだよ。だから」
『私の、異能を……使え……だろ?』
「……小生は彼方で待ってるからね」
そう告げるとリュヌは先刻隠れていた柱を指差してからスタスタと歩いて行ってしまった。
重い沈黙が私達を包んだ。
誰一人動こうとも、話そうともしなかった。
否、動こうとも話そうとも出来なかった。
然し、それを破るように私は一度胸に溜まった息を吐き出し自身に異能をかけてから、ゆっくりと口を開いた。
『私がこれから話す事は、お前達にとって突飛な事かも知れない。だが全て真実である事を云っておこう』
全て話そう、私の事を。
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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時