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佰肆拾陸 ページ18

胸に激痛が走った。
私はあまりの痛みに顔を顰めた。
傍らでジイドが大きく目を見開いているのが見えた。
視界の端で太宰と作之助が全く同じ表情で此方を見ているのが判った。




「クソッ!血が止まらない!」




仁が逸早く私に駆け寄り、止血しようと試みているがそれが無駄な事だと私は理解していた。




『仁……無駄、だ……』


「ッ、そんな事云うな!俺は何としてでもお前を助けたいんだ!」


『お前なら、判るだろう?』




私の言葉に仁の動きが止まった。
悔しそうな表情で下唇をキツく噛み締めて、何かに縋るかのように私の左手を強く握りしめた。




「Aッ!」


「おい、確りしろ!」


『太宰、作之助……』




我に返った二人が私に駆け寄って傷を確認し、その端正な顔を酷く歪めた。


血は留まる事を知らないのか流れ続け、床に(おびただ)しい血だまりでも作っているのだろう。
背中から水分_もとい、血液が服に染み込んで何とも云えない感触が伝わって来るのが証拠だ。




明らかに致命傷だったのはこの場に居た全員が判っていた。




作之助は私の隣に膝を落として、傷に響かせない程度に私の上体を少しだけ起こし、負担にもならない様に腕で支えてくれた。


流石、似た者同士と云われるだけあるのかも知れない。
声に出さずとも彼は私が何をして欲しいのか理解した上で動いてくれていた。




「A、今直ぐに本部に戻ろう。否、それだと遠過ぎるから駄目だ。じゃあ、どうすれば……嗚呼、あの病院が近い、其方に」


『太宰、私はもうポートマフィアの人間では無い。そして助かる事も、無い』


「駄目だ、止めてくれ。まだ助かるかも知れない、いや、きっと助かるよ。だから、そんな事を」


『太宰』




私は血に濡れた手で太宰の手を握り、微笑んだ。
きっと私の表情には、支払った代価に見合うだけの事を成し遂げた人間だけが浮かべる、ある種の満足感が表れていただろう。


泣きそうな顔をした太宰は視線を私からジイドへと変え、漏れ出る殺気を隠さずそのままキッと睨み付けた。




「君達が来なければAはこんな事にならなくて済んだ筈だ。お前が……!」


『止めてくれ、太宰。彼のせいじゃ無い……それに、この傷は“今”出来た訳でもない』


「なら、矢張りあの時……!」




ジイドの言葉にも私は首を小さく横に振って否定した。
嗚呼、そろそろ限界だ。

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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時

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