あけぬ夜はなし ページ30
ーーside
────誰かが、泣いている気がした。
誰かが、呼んでいる気がする。
・・・・・・でも、わたしは・・・・・・。
『逃げてはいけないわ。
まだ、“こどもたち”は足掻いてる。
なら、あなたも足掻きなさい。
私たちは“人じゃない”、けれど
あなた達は『人に限りなく近い』。
私達の、可愛くて、大切な末達であり。
敬愛する、私達の“主”でしょう?』
この匂いも、優しさも踏まえた上で
脳が、本能が“彼女”だと叫んでいた。
・・・・・・紅葉切・・・・・・?
『まったく、
何度も心配ばかりさせて・・・・・・
これだから僕の恋人は、目が離せない』
・・・・・・秋声、さん・・・・・・。
『師匠、自分は役に立たないかもしれません
けど、じっとしていられないんです。
師匠、師匠の文学は
自分を救ってくれました。
俺みたいなやつでも、『存在していいのだと』。』
・・・・・・琉庭くん・・・・・・。
・・・・・・あぁ、なんだ。
姉様はそうやって、抜け道を使ってくれていたのか。
────『異能』を作り変えるなんて、
水菜姉様にしかできない『荒技』、あまりに・・・・・・
花「紅葉切、わたしを、導いて」
『ええ。 言われなくとも』
母親の愛を、
本当の母親の代わりに注いでくれた彼女だから
信頼できる。
この異能にもし、名前をつけるなら。
花「───異能力、『大地の導き』。」
ありったけの異能の力を込めて生まれたその結晶に
今、せめてもの力になるようにと
守りのための力を込める。
花「・・・・・・ああ、なるほど?
この力は・・・・・・」
紅葉切「ええ。 こちらの世界では死している
貴方の眷属達の力を集約した物です。
地母神は眷属が多い、
大地に存在する全てを統括する力。
それを、貴方の『植え付けられた異能』を棄却し
生まれた余白にはめ込みました。」
ぱきっ、と
欠けたような音とともに、生み出した結晶が消える。
消えた先は分かりきった話。
悔いはない。
花「ねぇ、紅葉切」
紅葉切「大丈夫。
お前は図書館を、弟子を、文士たちを守りきった。
つぎは、あの子達の仲間としてあの子達を守る番。
そうでしょう?
『桜木花』。」
花「よーくわかってるみたいですね。」
紅葉切「当たり前でしょう。
何年お前達を見守ってきたと思ってるんですか。
・・・・・・花、決してあの子達の手を離さないように。
お前を愛してくれる子達を、取りこぼさないようにね」
9人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クラウン | 作成日時:2023年7月22日 4時