宣戦布告23 ページ24
その時だ。
心臓が口から飛び出るんじゃないか、ってレベルの驚くべき事態が起きたのは。
?「失礼、お嬢さん」
『は…!?』
反射で『ぎゃああああ!』と叫ばなかった私は偉い。
ぽん、と肩に手袋を嵌めた手がかけられたのだ。
ド肝を抜いて振り向くと更に上回る衝撃の光景。
『ど、どなた…って嘘ッ!?』
旧多「何ですかその顔。まるで珍獣でも見てるみたいな」
手の主はまさか居るなんて思っていなかった上官。
一ヶ月ぶりの対面に、私は今までの気まずさ云々を完全に忘れて声を上げた。
『何で退院早々こんなとこ居るんですか!?』
旧多「呼び出し食らったんですよ、キッショーさんに…サクラ欲しいって」
『さ、サクラ!?花の!?』
旧多「違います。馬鹿ですねぇ貴方…ほら、今年は人不足だそうで」
だから来てやったんです。偉いでしょ?
そう言って上官はケラケラ笑い声を零した。
怪我をする前と変わらない様子で。
『…っ』
1ヶ月も入院していた重傷人とは思えぬほど自然体な旧多一等を見て、一気に複雑な感情が溢れ出す。
張り詰めていた神経が、切れた。
『…旧多一等』
旧多「はい?」
ダメだ泣くな。私は緩み出そうとする涙腺を律し、顔を俯けて旧多一等を呼ぶ。
謝らなきゃ。
遅くなってしまったけど、許しを期待してる訳じゃないけど。
普段はすかさず「用件なら早く」「焦れったいなぁ」と茶々を入れてくる意地悪上官は、今日だけは私を待つように何も言わずにいてくれる。
私は数回声を出すのに失敗した後、やっと小さな声での発声に成功した。
『…ごめんなさい、上官…』
長い沈黙の後、ふっ、と静かな吐息が上官の唇から漏れる。
失望の溜め息か。怒りの嘆息か。
怖くて目を瞑っていた私だったが────
旧多「僕としては謝罪より、感謝の方が欲しいかな」
笑いながら旧多一等はそんな事を言って、少し強めに私の背中を叩いた。
不出来な部下を励ますように。
…気の所為かも知れないけど。
『あ、ありがとう、ござい…ッました。助け…て、くれて…』
どうにか礼を言うと上官の纏うオーラに《満足!》と言う感じが加わる。
そこが限界だった。
『…っ、う』
寸前で落ちずにいた涙の膜が決壊し、私が落とす涙で借り物のドレスが塩水に濡れて行く。
レースだったお陰でシミにならないのが幸いだ。
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みきざわ(プロフ) - あずまさん» 鼻血どんどん出しましょう!(笑)閲読有難うございます〜! (2019年1月23日 19時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
あずま(プロフ) - あぁ…やばい、、、鼻血でるぅ(;´Д`)ハァハァ (2019年1月23日 15時) (レス) id: 97c5686003 (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - えぬ=)さん» ニムラの魅力、少しでもお伝え出来ているのなら幸いです!尊敬だなんてそんな、勿体ない(笑) 嬉しいお言葉、恐縮です! (2019年1月21日 5時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
えぬ=)(プロフ) - ああ……溶けちゃいそうです……← 本当に最高です……前作からずっと思ってたけど最高です……尊敬してます……!何故そんなににむにむの魅力を素晴らしいクオリティで書けるのか……尊敬してます(二回目) (2019年1月21日 0時) (レス) id: ae2a3cb03d (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - ハニーさん» 謹んで新年のお慶びを申し上げます!2019年がハニー様の良き年になる事を願っております... (2019年1月1日 0時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みきざわ | 作成日時:2018年12月16日 18時