宣戦布告44 ページ45
『…頂きます』
冷めないうちに、と包装を破いて肉まんに齧り付く。
美味しい。
思えば最近はご飯、おろそかにしてたっけ。
今日初めてする食事に、少しだけ穏やかな気持ちになれた。
旧多「…その様子じゃ、ろくなご飯食べてなかったんでしょ」
『…』
旧多さんの言葉に黙って頷き、また肉まんをぱくり。
何だかやっとお腹が減っていた事実に気付けた感じで、それまで全然《お腹が空いた》感覚を感じていなかった自分がちょっと怖くもなった。
『あ…』
あっという間に手にあった食物は無くなってしまい、気分は自然としょんぼりしてしまう。
無くなっちゃった…肉まん…
ゴミしかない手を見つめ肩を落とす私。
旧多「お代わり御所望です?」
…するとゴミが強引に奪われ、代わりに渡されたのは。
メロンパン。
旧多「まだ足りないかと思いまして。お好き?メロンパン」
『…!』
差し出されたそれを震える手で取れば、脳裏にハイル先輩の笑顔が鮮明に蘇った。
ハイル[笑ってしょ、A]
『…っ』
視界が歪み始めるのを誤魔化すように袋を開けてパンに食いつく。
口に広がる優しい甘さ、きゅうっと痛む胸、瞼の裏で弾けては消える先輩の姿…
泣くな、という方が無理だった。
『…』
もそもそとパンを食べ、目から自分でも引く量の涙を流す私。
頬を伝って顎、顎から滴ってスーツ…垂れる透明な雫を拭う余裕も無い。
旧多「…僕は貴方のように、感傷的にはなれませんが」
旧多「《彼等》はきっと…Aさんには笑って居て欲しいと、そう思っている筈ですよ」
旧多「いつまでも貴方が《泣き虫Aちゃん》じゃ、向こうもおちおち休めませんでしょ?」
『…は、いっ…』
おどけながらも静かな口調で言われ、嗚咽を堪えて何度も何度も頷く。
そうだ。
私が情けなくてどうする。
─────────前を向かなくちゃ。
『…すみませっ、旧多さ…ティッシュ…ありませんか…』
旧多「ありますよ。一枚100円で〜す」
『ひ、酷い!泣いてる、部下に…ぼったくりな』
旧多「知りませんよ。ほら鼻かんで、目も拭いて」
『子供扱いしないで下さい!』
旧多「こんな可愛くねぇガキいませんよ…」
私は泣き笑いのような顔になりながら涙やら何やらを拭い取り、勢いをつけて立ち上がる。
見上げた空は、青かった。
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みきざわ(プロフ) - あずまさん» 鼻血どんどん出しましょう!(笑)閲読有難うございます〜! (2019年1月23日 19時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
あずま(プロフ) - あぁ…やばい、、、鼻血でるぅ(;´Д`)ハァハァ (2019年1月23日 15時) (レス) id: 97c5686003 (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - えぬ=)さん» ニムラの魅力、少しでもお伝え出来ているのなら幸いです!尊敬だなんてそんな、勿体ない(笑) 嬉しいお言葉、恐縮です! (2019年1月21日 5時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
えぬ=)(プロフ) - ああ……溶けちゃいそうです……← 本当に最高です……前作からずっと思ってたけど最高です……尊敬してます……!何故そんなににむにむの魅力を素晴らしいクオリティで書けるのか……尊敬してます(二回目) (2019年1月21日 0時) (レス) id: ae2a3cb03d (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - ハニーさん» 謹んで新年のお慶びを申し上げます!2019年がハニー様の良き年になる事を願っております... (2019年1月1日 0時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みきざわ | 作成日時:2018年12月16日 18時