Show me your real face, Mr. Crown！〜閑話〜

『弄び弄ばれ』 ページ3

バー【Helter Skelter 】にて。


イトリ「…で、結局宗ちゃんはその女の子とめでたく結ばれたって訳ね」

宗太「ご名答。何だかんだ落ち着いて良かったっス」




ふぅん、良かったじゃない。




いつの間にかちゃっかり伴侶を手に入れ幸せになっていた《ピエロ》を睨み、私…絶世の美女イトリ様は密かに嘆息した。

目の前でワインを傾ける泣きぼくろの男は誰がどう見ても平和ボケした顔。

宗太「でもね、Aったらいつまでもウブなんですよ。ちょーっとキスしたぐらいで真っ赤になるんですから」

かと思うと怒濤のように惚気を垂れ流すもんだから、なかなか癇に障る。

私への当て付けか。







…でも一方で、少しだけ微笑ましい気にもなった。



宗太「この間なんかサプライズでネックレスあげたら飛び上がって喜んでまして…あんな感情豊かな子、そういませんよ」









初めはただの《体目当て》《暇潰し》で捕まえたはずのその女の子に、いつしか逆に宗ちゃんの方が虜になっている。


これじゃピエロ失格じゃない？狙った獲物に弄ばれるなんて。





しかも痛々しいのは宗ちゃん自体そのAちゃんに振り回されている事を自覚していない、って所かしら。



手に負えないわね、これは。





宗太「イトリさん？何ニヤケてるんすか」

イトリ「んー？何でもぉ？」


気付いたら苦笑いを浮かべていたらしく、不思議そうにこちらを見ている宗ちゃんに私はわざとらしく首を傾げてみる。


イトリ「極悪宗ちゃんも随分丸くなった、と思ってねぇ」


嫌味混じりにそう言うも返って来たのは「Aのお陰です」という最大級の彼女自慢。


イトリ「はいはい、アンタの彼女煩悩には負けたわ…」




──浮気したくなったらいつでも相手するわよ。




負け惜しみついでに囁くも、宗ちゃんはやんわりと首を横に振って目を細めた。




宗太「未来永劫有り得ないんで御安心を」




イトリ「…はー、こうも開き直られると何かムカついて来るわね。じゃあ逆にAちゃん寝取っちゃおうかしら」

宗太「やめて下さい、あの子の事だから本当にそうなる可能性あるんで」



苦笑いで私の冗談を受け流す宗ちゃんの目はしかし意外と本気で、どうやら完璧に宗ちゃんを翻弄しているらしいAちゃんがほんの少し羨ましく思える。

相当なやり手のようね、Aちゃん。





しかし後日、私はAちゃんに実際に会い、その並外れた素直さと危なっかしさに驚愕する事となった。

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