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恐らく他の女にもこういう行為を働いているのだろう、自信ありげな顔に躊躇は微塵も無かった。
…仮にも上司からもたらされる凶行を、まだ新米のAが無下に跳ね除けられる筈が無い。
『やっ…!』
そんな彼女に出来ることと言えば、涙に潤んだ目を瞑ってひたすら怯える事だけだった。
ぷちん、と。
頭の奥で勢い良く最後のストッパーが弾ける。
…くっそ、こいつ殺す。絶対殺す。僕が殺る。
こいつだけは生かしてなるものか。
内心毒を吐き、僕は堪らず陰から出ると《あくまで平静を装い》Aの元に歩み寄った。
旧多「Aさぁ〜ん?ちょっと頼みたいお仕事あるんですが…」
『ふ、旧多さん!』
半泣きで顔を上げるA。
ちっと舌打ちして手を引っ込めるクソ野郎。
しかし僕は何も知らないフリをして…胸中に渦巻く殺意を上手く隠して、挨拶だけはしておいた。
旧多「あ、二等。こんにちは〜」
上司「…じゃ、Aちゃん。また後で」
僕の挨拶を無視し、ついでに肩をわざと僕にぶつけてオフィスから去って行く男。
その背中が見えなくなった後、Aはようやくほっとしたように息を吐いた。
旧多「この資料の確認だけ頼んじゃって宜しいですか?」
『は…はい!分かりました…』
手近にあった資料を渡して校閲を促すと、Aは素直にそれを受け取ってデスクに戻る。
…僕が数日前に完璧にした資料。
訂正箇所などあろうはずがない。
ただその資料は無駄に分厚い為、僕の《計画》に彼女の目を向けさせないための目くらましにはお誂え向きだった。
真面目な顔でプリントと睨めっこし始めたAを一瞥した後、僕は先程のクソ男を追いかける。
旧多「すみません、二等!」
上司「…あ?」
さっきまでAに向けていたにやにや笑顔から一点、不機嫌一点張りの顔で僕を見る男。
僕は嘘臭い笑顔を浮かべると、平然と嘘を吐いた。
旧多「Aさんがですね、二等にお伝えしたい事があるみたいで…午後六時、〇〇公園に集合場所を変えて欲しいそうですよ?」
残念。
お前がAに会える日はもう二度と訪れないよ。
上司「ふーん、そうか。ありがとう」
旧多「いえいえ〜」
何の疑いもなく了承した馬鹿野郎に内心で十字を切りながら、僕はオフィスに戻りつつ綿密に計画を練り始める。
旧多「…ふふ」
背中に宿る血に飢えた赫子が、久々の《予感》を感じ取り、ずくりと蠢いた。
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みきざわ(プロフ) - イヴ「和」○かき氷さん» 好き放題書かせて頂いている次第ですが、面白いと言っていただけるとは幸せの極み.......!ありがとうございます!イヴさんのご感想に毎度励まされております! (2019年8月22日 17時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
イヴ「和」○かき氷(プロフ) - またまたこんにちは!!こちらの作品もめちゃくちゃ面白かったです!!やっぱみきざわ様の書く旧多君は最っ高ですね!!また鼻血出そうでしたよ…素敵な作品ありがとうございました!!! (2019年8月22日 9時) (レス) id: 4e47db8a66 (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - ハルさん» なかなか面白くする文体に慣れておらず四苦八苦しております(笑)表現技法とは難しいものです... (2019年4月29日 21時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 短編もおもしろいし、最高ですね!みきざわさまの作品のにむらは相変わらず最高です!! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d53301ec48 (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - 優衣さん» ファンの少なさ、私も語れる人がたいへん少ない現状を憂いている次第です.......。お読み下さり本当に有難うございます! (2019年4月5日 5時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みきざわ | 作成日時:2018年11月7日 6時