〃 ページ14
何を要求されるんだろう。
出来ればあんまり金額かかんない物が良いな…給料日前だし。
でも結局言われたら従うしかないんだなぁ…
頭の中は早くも《貢がされる》恐怖でいっぱいで。
だから、旧多さんがいきなりゴミ箱の中にあった例のチョコ包みを手に取ったのを見た瞬間は本気で何が起きたか分からなかった。
旧多「勿体無い事しますね。まだ未開封じゃないですか」
『あ…!そ、それは…!』
旧多「食べ物は粗末にするな、って言葉はご存知?んー如何にも貴女がやりましたってな包装。リボンよれてますよ」
『…っ!』
黒歴史を攫われた挙句ラッピングの拙さまで指摘され、私は泣きたいような逃げたいような気持ちになって黙り込む。
もうやだ。これじゃ私が旧多さんに渡そうとしてたの、バレバレじゃない 。
旧多さんは暫しその包みをしげしげと眺め回し…そして口を開く。
旧多「お代はこれで勘弁してあげますね」
いつもの胡散臭い笑顔のままで彼が紡ぎ出したのは、天災並にとんでもない台詞。
『えぇ!?』
何言ってんのこの人!
私は思わずしょげていたのも忘れて声を上げた。
『な、何言って…!それ今捨てたやつですよ、ゴミ箱インしてたんですよ!?しかもお店のちゃんとしたやつじゃないし…!』
旧多「貴女に口出しされる筋合いございませんねぇ、良いじゃないですか別に。Aも本当は願ったり叶ったりなんじゃ?」
うーわ、頭の中読まれてるよ…!
冷や汗をかきつつ内心舌を巻く。
確かに、まさか受け取るとは思わなかった旧多さんにチョコを貰って頂けるのは嬉しい。
でもいざそうなるとやっぱり手作りなんてドン引きされるんじゃ…そこまで上手くもないし。
ごちゃごちゃ考える私を他所に旧多さんは「決まりですね」と私のチョコを仕舞ってしまい、私が反応する前にさっさと立ち去ってしまった。
旧多「それでは。ご馳走様で〜す」
『え、あ、えっ、えぇ…?』
オフィスに残された私は呆然と10分ぐらい立ち尽くしていたが、やがてドキドキと騒ぎ始めた心音と共に緩む頬を押さえる。
『…ど、どーしよ』
色々あったけど、旧多さんは私からのバレンタインチョコを受け取ってくれた。
しかも大量のお菓子というプレゼントまでくれて。
『…えへへ、夢みたい…』
顔が熱くなるのを感じながらお菓子をカバンに詰める作業を再開し、私は思う。
やはりバレンタインは消えるべきではない、と。
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みきざわ(プロフ) - イヴ「和」○かき氷さん» 好き放題書かせて頂いている次第ですが、面白いと言っていただけるとは幸せの極み.......!ありがとうございます!イヴさんのご感想に毎度励まされております! (2019年8月22日 17時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
イヴ「和」○かき氷(プロフ) - またまたこんにちは!!こちらの作品もめちゃくちゃ面白かったです!!やっぱみきざわ様の書く旧多君は最っ高ですね!!また鼻血出そうでしたよ…素敵な作品ありがとうございました!!! (2019年8月22日 9時) (レス) id: 4e47db8a66 (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - ハルさん» なかなか面白くする文体に慣れておらず四苦八苦しております(笑)表現技法とは難しいものです... (2019年4月29日 21時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 短編もおもしろいし、最高ですね!みきざわさまの作品のにむらは相変わらず最高です!! (2019年4月29日 20時) (レス) id: d53301ec48 (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - 優衣さん» ファンの少なさ、私も語れる人がたいへん少ない現状を憂いている次第です.......。お読み下さり本当に有難うございます! (2019年4月5日 5時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みきざわ | 作成日時:2018年11月7日 6時