〃 ページ12
『…』
がさ、と音を立ててカバンから引っ張り出したのは丁寧に包装した手作りのチョコレート。
誰にあげようとしてたかはお察しの通り…でももういいや。
旧多さんは帰ってしまっただろうし、他に渡すあてがある訳でもない。
せっかく昨日の夜、頑張って作ったんだけど。
思い浮かぶのは電子レンジからもうもうと立ち昇る黒煙と戦った苦心惨憺の昨晩と…お昼まで嫌という程に見た、旧多さんのチョコ無双状態。
あんなに貰っちゃったら私のなんか要らないよな…いじけてる訳じゃなく、常識的に考えて。
置き場所にも難儀するだろう。
それに私はロゼ戦のあれこれを経て旧多さんの《所有物》になった身。
そんな立場の部下から贈り物をあげたとて、目の前で捨てられるか踏み潰されるかだろう。
第一、そんな事をされたら間違い無く一生立ち直れません。
『ごめんね』
私は努力の結晶を手に取ると、ちょっと躊躇うものの心を決めてえいっとゴミ箱に放り込む。
胸には空虚な寂しさが渦を巻いたものの何となく気が晴れ、私は帰る用意をしようとスペースの間にペンケースと水筒を突っ込む。
それとほぼ同時だった。
旧多「失礼しまぁ〜す♪いやー疲れた疲れた。人使い荒いんだから准特は…」
外に見廻りに行っていた筈の旧多さんが帰って来たのは。
いつもなら胸踊る展開、しかし今日という今日だけは憂鬱以外の何物でもない。
旧多「ただいまぁ〜Aさん」
先輩には敬意を払う私でも今日ばかりは無礼講、無愛想に頭を下げた。
『…お疲れ様です』
旧多「げ、なんか不機嫌？生意気だなぁ。お仕置きしたくなっちゃいますね」
いやいや、私にとって今日一日がそもそも凄まじい拷問でしたから！特に貴方のモッテモテなシーン！
心の中では怒鳴り散らすも表面化できるほど豪胆な私じゃない。
取り敢えず『すみません』とだけ返しておいた。
恐らくその対応が旧多さんの癇に障ったのだろう。
次の瞬間、
旧多「あ、そうそうAさん！聞いて下さいよ、今日バレンタインデーでしてね･･･じゃーん！」
あろうことか私のデスクに、ドサドサと音を立てて大量のラッピングされたお菓子が落ちて来た。
旧多さんが貰ったバレンタインの贈り物。
よくもこんなに沢山、といっそ感慨すら湧くぐらいの個数だった。
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みきざわ(プロフ) - イヴ「和」○かき氷さん» 好き放題書かせて頂いている次第ですが、面白いと言っていただけるとは幸せの極み.......！ありがとうございます！イヴさんのご感想に毎度励まされております！ (2019年8月22日 17時) (
レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
イヴ「和」○かき氷(プロフ) - またまたこんにちは！！こちらの作品もめちゃくちゃ面白かったです！！やっぱみきざわ様の書く旧多君は最っ高ですね！！また鼻血出そうでしたよ…素敵な作品ありがとうございました！！！ (2019年8月22日 9時) (レス) id: 4e47db8a66 (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - ハルさん» なかなか面白くする文体に慣れておらず四苦八苦しております（笑）表現技法とは難しいものです... (2019年4月29日 21時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 短編もおもしろいし、最高ですね！みきざわさまの作品のにむらは相変わらず最高です！！ (2019年4月29日 20時) (レス) id: d53301ec48 (このIDを非表示/違反報告)
みきざわ(プロフ) - 優衣さん» ファンの少なさ、私も語れる人がたいへん少ない現状を憂いている次第です.......。お読み下さり本当に有難うございます！ (2019年4月5日 5時) (レス) id: d7c1dbf7e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みきざわ | 作成日時：2018年11月7日 6時
