Show me your real face, Mr. Crown！〜閑話〜

『お手々繋いで』 ページ1

『すみません、お先に失礼します！』
「はい、お疲れ様」「また明日〜」「達者でなA」




いつも通り、定時ちょっと過ぎにそそくさと退散する仕事帰り。

『…あー…肩凝った…ん？』

おっさん臭い愚痴を零しながら職場の建物から出ると、玄関口から少し離れた所に見知った姿を発見した。



宗太「お疲れ様で〜す♡」



『宗太さん！』


どうやら私を待っていてくれたらしい宗太さんは、私の姿を見つけると人懐こい笑顔を浮かべてこちらに手を振った。

真っ赤なネクタイに黒いロングコートがあんなに似合う人は彼以外いない。
右目の下にある泣きぼくろがあんなにマッチするのも。

･･･恋人の僻目というのもあるんだろうけど。


『ごめんなさい、待ちましたか？』
宗太「いえいえ全然。さ、帰りましょ」

駆け寄るとごく自然な流れで重いカバンを奪われ、かと思うと徐に右手に嵌めていた革手袋を取る。


外では滅多に見ない、宗太さんの素手。


色白で長い指の綺麗な手に暫し見とれていると、


──────ぎゅっ、と。


その手は何の予備動作も無く私の左手を絡め取った。



突然の心臓に悪いアクションに私は息を飲み…その様子を見た宗太さんはくすりと笑う。
涼やかさに圧倒的な余裕を含ませた笑顔を。



宗太「うっわ重たい荷物。Aは相変わらず社畜やってるみたいですねぇ、身体壊さない程度にサボるが吉ですよ？」
『え、いや、あの』


違う！私の動揺は別に荷物取られたからじゃありません！

そっちじゃなくて手！手、そんな普通に繋ぎますか貴方っていう人は！
罪な男め…！


パニックになると溢れ返る脳内弾幕は今でも健在。


宗太さんの素手というのは何だか普通に手を繋がれるより緊張し、心拍数が荒れる荒れる。
秋口という少し季節のせいか僅かにひんやりとした彼の手の冷たさが一層の緊張を煽っていた。

宗太「A？お顔真っ赤ですけど」


しれっと言ってあざとくハテナマークを頭上に浮かべる宗太さん。


『っ仕方無いじゃないですか、そんないきなり手なんて繋がれたら…！心臓溶けます！』
宗太「溶ける？そりゃ大変。んじゃ離します？」
『え…』
宗太「冗談ですよ。あーもうそんな寂しそうな顔しないの」


帰り道を歩きながらも私は良いようにからかわれ、弄ばれ、面白がられ。


でもそれが全く嫌じゃないのは《恋は盲目》の具現なのか、単に私がドM…うぅ、考えたくないけど…だからか。


出来ればドM説は否定しておきたい。

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