【歌い手】そんなの俺は認めない【そらる】

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Aの仕事が終わるまで待つから呑みに行こう、と連絡をしてきたのは彼だ。夕方にしかあがれない、と返信したにも関わらず、近くで暇つぶしするから大丈夫って言ってきたのも彼だ。

そしてそんな彼の説得に負けて、今現在呑んでいるのは私だ。


『…来るなら一言言ってから来てくれませんかね。先輩びっくりしてたよ』

「でも嬉しかったでしょ？」

『そう思える君の頭は平和だね』

「A限定」


唐揚げをつまみながら笑う一ノ瀬。
1回精密検査をしたほうがいいじゃないかな。なんて、そんな事を本人に言えるわけもなく、アルコールをひと口。

やっとお酒を口にした私を見ながら「でもさ」と一ノ瀬は言葉を紡いだ。


「俺のことなんやかんだ言いながら、こういうのに付き合ってくれるんだ」

『……誘われたら基本断らないよ』

「それが好意を持ってるって分かってる男でも？」


いやに落ち着いている彼の声に思わず顔を上げる。なに、その顔。
愛しいものを見る目なんかしちゃってさ。やめてよ、相手私だよ？君のこと、好きじゃない女だよ？



それから、ほんの一瞬。

文句のひとつも出てこない口に、彼のそれが重なった。ゆっくりと離れていく唇は薄い癖に柔らかくて。

呆然と見上げた彼は、寂しそうに笑っている。




「ねぇ、俺のことまだ好きになってくれない？」




ーーー

作者です。

更新できてなかったお詫びにと、書きました。
お詫びどころか謝罪もんですねこれ。

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