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「あ〜疲れた」
グイッと背伸びをして首をぐるぐる回す。
つい先刻まで目の前にいた呪霊はもうどこにもいない。
そりゃそうだ、何せ禁忌にも近い階級の領域展開、有耶無耶を使ったのだから。
もはや使う俺本人すら 全てを理解しきれていない。
有耶無耶は俺でさえ領域に入ったことが分からないほどの高速の合間に対象物を消滅してしまう。
ただこれは現実ではコンマ程の速さのことであっても領域内に入ったものからすればそれはもう億万年の時に閉じ込められたのと変わらないもの。
口で言うのは難しいが、例えていうのなら俺の領域はただ永遠の暗闇の中を上下左右も何もわからぬまま歩き続けるようなものだ。腹も空かない、疲れも感じない。
そんな無の世界でただただ歩き続けるような、そんなもの。
目がチカチカして吐き気がして気が狂って狂って泣きながら許しを求めても、決して終わらぬその無限は
何年後 何百年後 何万年後、それよりもずうっと長い時間を 対象物に与え、強制的にその暗闇で過ごさせてしまう。
そして、いつの日か 引きずりまれた対象物が白目を向き泡を吹きふん尿を垂れながした時に、緩やかに空気が膨張し物体を押し潰す。
それが、只今の一瞬にして全て行われた。
これが禁忌に最も近いとされた俺の領域だった。
伏黒「………あ、んた」
さて帰るかと気持ちを切り替えたところで弱々しい嗄れた声が聞こえる。振り向けばうっすらと開いた伏黒くんの瞳と目が合った。
「起きたの。凄い活力だな よく話せるね」
伏黒「ぅ、」
横たわる体に近づいて顔を近づけるようにしゃがめば伏黒くんも起き上がろうとして、腹の痛みに気づいたのか顔を歪めていた。
「あぁこら、喋ろうとしないで。傷が開くから。って言っても今は感覚麻痺してるから痛みが襲うだけでどこが怪我してるのか分からないと思うけどね。」
つんつんとした黒髪を撫でると伏黒くんはバタリと倒れ込むかのようにヒュンッと瞳を閉じた。
「お疲れ様、早く高専に帰ろーね」
まだ暖かい重みを抱え 外で待機中の伊地知さんに任務終了の電話をかけた。
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フロイド - とても面白い。更新待ってます。 (2021年3月20日 0時) (レス) id: d87b220079 (このIDを非表示/違反報告)
水たまり - コメント失礼します。尊いです、好きです。狗巻くんの語彙は確かそういうのを纏めた記事があったような気がします、調べてみればわかるかと!好きです!応援してます頑張ってください^^* (2021年1月3日 9時) (レス) id: 0358aa12a5 (このIDを非表示/違反報告)
m.(プロフ) - うららさん» ひゃあああ、ありがとうございます!更新頑張ります! (2020年12月27日 11時) (レス) id: b5c70db5f0 (このIDを非表示/違反報告)
うらら(プロフ) - 続き楽しみにしております。 (2020年12月23日 20時) (レス) id: e068332aca (このIDを非表示/違反報告)
うらら(プロフ) - やばいですね!!!尊くてやばいです!!!これからも応援しています。 (2020年12月23日 20時) (レス) id: e068332aca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:m. | 作成日時:2020年11月25日 22時