▽ ページ20
Aside
校庭を見てみるとあの時付いていた足跡がある。
「これが、あの朝匠君が仕組んだトリックだよ。
匠君は盗んだ冬美ちゃんのローファーを使って、こんな道具を用意したんじゃないかな?
匠君は足跡の形に塩をまいておき…校庭に冬美ちゃんを呼び出した。
理科で習ったよね。雪と潮が混ざると氷の融点が下がって、
どんどん解けだすんだよ。そして、警察が現場検証する頃には、
雪が雨に変わり足跡に使った塩は洗い流される。見事なトリックよ。」
「島津。偶然浜で今井龍也さんに会ったよ。
お前のお父さんのほうのな。同姓同名だったんだな。
お前のお父さんと春菜のお父さん。
付き合ってたんだろ?お前と春菜。」
私は、はじめちゃんの隣の席に座った。
「春菜も俺も物心つく前に両親が別れて母子家庭だったから、
何かと馬が合ってな。中3の時、俺が肩こわして甲子園の夢、
諦めた時も救ってくれたのは、春菜だった。」
「あの遺書、"うれしい色がだったはずが許されない色だった"。
これははじめちゃんと私の想像だけど、春菜ちゃんのお腹には…。」
「あぁ、赤ちゃんがいた。俺が父親に…心の底から、うれしかった。
結婚して春菜と子供のために生きる。
俺にしか叶えられない夢見つけたって、そう思った。
でも…春菜が泣きながら俺に電話を。」
外をふと見ると、雪が雨に変わっていた。
「あの真っ白な帽子は俺と春菜の、永遠の秘密になるはずだった。
けど春菜の葬式が終わって、すぐあいつらが話してるのを聞いたんだ。
あいつらのくだらないウソのせいで…どうして春菜が死ななきゃならないんだ!」
「何で春菜は、そんなでたらめなウソ、信じたんだ?」
「それは…俺たちが、まだ付き合い始めて、すぐの頃…。
あの写真は、後になって俺と春菜が血のつながったきょうだいだと思わせるには十分だった。
春菜を追いつめたのは冬美と綾花だけじゃ、ない。
あいつらのウソから春菜を守ってやれなかった俺も同罪だ。」
もう既に雨が止んでいて、匠君は教室に出て直ぐにある木のそばに立った。
90人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:反町ゆうり | 作成日時:2022年3月13日 12時