子供 雑渡side ページ34
(妙だな。殺気が感じられない)
侵入した敵の排除へとやって来ていた私はふと、そんなことを思う。易々とタソガレドキの城内へと侵入しておきながら、敵から殺気を感じられなかった
それどころか、一定の距離を保たれている
まるで足止めの様な。
(まさか本元は別に?)
「鷹尾くん!?」
視界の片隅に鷹尾くんと思わしき後ろ姿が見えた。
そして、もう1人…私が前に捕らえた元侍も一緒にいた
(何故、彼が逃したのか?)
「尊奈門、陣内。ここを任せた」
「うぇ!?組頭ッ?どこへ」
「よそ見するな尊奈門来るぞ!」
私は彼らを追った。
前を走る鷹尾くんの背中は少し小さく見える
忍術学園では最上級生で頼りになる存在
それでも、年齢的に言えばまだまだ私からしたら子供なのだ
「鷹尾くん!」
ようやく追いついた背中はちょうど崖を上りきる所だった
私の声に足は止まったものの、その背中は振り返らなかった
「何処に行くんだい?」
『鉢屋を狙った賊は、俺の父親だった。あの人の性格だと次に何するかわからない。早めに手を打たないと
……俺が、やらなくちゃ』
「まさか君、1人で」
『お願いがあります
もしも、忍術学園で何かあったら……力を貸して下さい。いつもあなたが保健委員を助けるみたいに』
ようやくこちらを向いた鷹尾くんは切なげにそう言う
「君1人でなんて無茶だ。死にに行く様なものでしょ」
『俺1人の命で事足りるなら、いくらでもくれてやるさ
元々、あってないような命だしな』
「待てッ……!!」
コロリと転がって来たそれを黙認し、咄嗟に後方の木に飛び移る。するとすぐにその場所は爆発の影響で煙が舞った
「…」
煙が消え、視界が晴れる頃 目先には誰もいなかった。この時、私は自分の爪の甘さに怒りを覚える
事態は自分が思っているほどかなり深刻なものだったのだ
(あってないような命。ね、言うじゃないか)
当然、私はもしもの時が来たら忍術学園の子達を持ちうる力で守るだろう
でも、私は君の事だって守ってやりたかったんだよ
自分の命を軽く捕らえてる君の考えを変えさせて
忍術学園に返すつもりだったんだ
だって、あそこにいる君は今よりずっと幸せそうな顔をしていた。友や恩師や後輩に支えられながら、学園生活を送るのではダメだったのか?
「それで…君は満足なの? つくしくん」
(Aくんに、もう無茶はしないって誓ったんだろ?)
ぽつりと出た言葉は、溢れるように落ち
彼に届く事はなかった
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伊綱(プロフ) - 紫さん» ありがとうございますありがとうございます!!めちゃくちゃ嬉しいです頑張りますっっ (2020年12月23日 12時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
紫 - この作品むっちゃ好きです。更新楽しみにしてます (2020年12月22日 3時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 葵さん» ありがとうございます!とても嬉しいですっっ (2020年10月28日 15時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年10月28日 14時) (レス) id: 1d63efc7c2 (このIDを非表示/違反報告)
伊綱(プロフ) - 猫築かなめさん» ありがとうございます!!なるべく更新できるよう頑張ります (2020年10月23日 11時) (レス) id: f89eb70165 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊綱 | 作成日時:2020年7月25日 13時