いち。 ページ1
ぱちん。
意識の泡が弾けた。
御免ね、と云う声が、聞こえた気がした。
序章
或る莫迦の始まり
変な夢をみた、と云うには
眼を開ける。
途端黒いモノが手指を、額を、頬を滑り落ちていく。べたりと不快に貼り付くそれは、鉄臭い。
___一体全体此処は、何処なのだろう。
「ひいッ…………ばけ、化け物か貴様!!!」
『………?』
ぐるん、と声がした方に首を傾ける。酷く怯えたその声の主は、ぶるぶると怯える中年くらいの男性だった。手元に銃を持っていることからして、わたしを殺そうとしていたのだろうか。
「何故………何故銃弾の雨に中ったのに!!あれだけの銃弾を受けたのに!!!」
『____ふふ、成程。』
思わず笑みが溢れた。べたりと不快に貼り付くモノは、私の血肉。目の前の男は、敵。簡単なことだ。辺りに倒れる死骸は、わたしの身内なのだろうか。今となっては確認する術が有ろうと無かろうと、どうでも良いのだけれど。
『(………確かに此処は、地獄だね………"太宰さん"。)』
唐突だけれど、意味がわからないけれど。【あの夢】がもしも本当ならば___わたしのすることは決まっている。
静かに"落ちていた"拳銃を拾った。きっとこれは【彼】のものだ。上手くこの世界から逃げ出した、頭の良い【彼】の。
其なら、演じてやろうではないか。
『………何故だと、思う?』
笑みを溢して。希望よりも、絶望を宿して。
『特別に教えてあげよう。………わたしはね、"正しいこと"の方から嫌われているのだよ。』
躰中の痛みを、隠して。引き金に力を入れて、照準を合わせて。道化のように笑え。
『
ぱあん、と音が鳴る。強い衝撃に腕がもげそうだ、と呟いた。其のまま拳銃をぽいと棄てる。もう此れに用はない。そして恐らく此処にも。
ふらりと立つ。倒れていく躰など見向きもせずに、脚を踏み締める。ぐちゃ、とかべちょ、とか音が聞こえたけれど無視して扉を開けた。
雨が降っていた。
灰色の空に___雨雲が、立ち込めていた。
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Writer(プロフ) - 無さん» コメントありがとうございます、そして返信が遅れて申し訳ございません!主人公わりとのほほんなので太宰にどう被せていくか考えてるところです………上手くまとめられるように精進して行きますので宜しくお願い致します。 (2018年3月5日 2時) (レス) id: 8bb1061e6e (このIDを非表示/違反報告)
無 - 面白いです。主人公がこれからどう物語を動かしてくのか気になります! (2018年1月27日 0時) (レス) id: 61fbc426b8 (このIDを非表示/違反報告)
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