俺と彼奴とシンデレラ２ (ページ43)

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【紫耀】

「A迎えに行くから、お前ん家上がることになるけどええ？」

帰り際にそう訊いてきた廉に、

「あぁ、うん、迎えに行ってくれるんだ。じゃあ一応これ渡しとく。」

俺はそう言って鞄から鍵を取り出し、廉に手渡した。

「あ、お前、俺が帰って来たらちゃんと開けろよ？開けずにイチャついてたらマジで出禁にするからな！」

「言われんでも開けるに決まってるやろ！」

こんなやり取りをしてから約1時間。

ようやく俺も全ての仕事が終わり、帰路につく。

マネージャーが運転する車の中、廉にこれから帰ることをラインで伝えると、背もたれを倒し体を労わるように目を瞑った。

"うん、考えてみる。"

誕生日に何か食べたい物や欲しい物を考えておいてと言った俺に、Aはありがとうの言葉と共に笑顔でそう言ったけれど、

きっとまたいつものお決まりの答えが返ってくるだけだろう。

"苺のチョコレート！"

"キラキラのシール！"

"動物の消しゴム！"

昔は同じ問いかけにも、ちゃんと答えをくれていた。

とは言っても、俺のお小遣いでも買えるような些細なものばかり。

そう、Aは小さいながらも俺を想って、いつも優しい答えを出してくれていたんだ。

まぁ日本とカナダという遠く離れた場所に住む俺たちが、誕生日ちょうどに会えることはなく、半年後にやっと渡せたなんてこともあったけど。

俺は早くAに遠慮のない思いっきり我儘な答えを出して欲しくて、

早くAにとびっきり豪華なプレゼントを贈れるようになりたくて、

ダンスの先生に保育士や自衛隊、将来就く職業を早くから具体的に思い描いていた。

だけど、俺がジャニーズに入って、やっとお小遣いにしては十分過ぎるほどの稼ぎがあるようになった頃から、Aは決まって、

"紫耀がいてくれればそれでいい"

そう答えるようになった。