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「……」
「いやいるのわかってるから。さっさと降りてこい!!」
男を逃してしまったことにより少々苛ついているAは、まきびしを投げつけた木を蹴った。
すると木の上から音もなく茶色い忍び装束を着た大男が降りてきた。
「……確かにその方が追いつかれるまでの時間が稼げただろうね」
「やっぱりその時から後着いてきてたんだ」
「いやぁついね」
「まあいいけど、あなた誰?」
「私の名を知りたいならまずはそっちから名乗ったらどう?」
「……じゃあいいや」
なんかこいつ面倒臭いぞ?相手にしない方が良いな!!
この短い会話でAはそう判断し大男から距離を取った。
「そういうわけでサヨナラ〜」
「ちょっとちょっと、そりゃないでしょ!」
さっさと帰ろうとしたところパシリと手首を掴まれた。
「え、何、怖」
「え〜怖くないよ〜?ほらこんなに良い笑顔してるじゃない?」
「いやどこが?あんた右目だけしか見えないじゃん」
この瞬間、Aはこの大男のことが苦手になった。
瞬時に掴まれている手をパーに開くと親指を相手の指の出口へ向けた。そしてテコの原理を利用して、相手の指の出口を手のひらで切り開くように手首を抜いた。
「おや、抜けられちゃった」
「強く握りすぎだわアホ」
Aは痛かったなーっと棒読みで言いながら掴まれていた腕をぷらぷらと振った。
「それは悪いことをしたね。じゃあ今度お詫びの品を持ってくるから名前教えてくれる?」
「げっ、何そういうやり口だったわけ?」
うげーっと顔を歪めながらジリジリと後退するAと同じように追い詰める大男。
しばらくするとトンっとAの背中が木にあたった。追い詰められたようだ。それでも大男はAに近づき、鼻が触れ合う距離まで顔を近づけた。
「……知らない人には名前を教えるなって言われてるんで、離れてもらえます?」
「えー……私はタソガレドキ忍軍組頭の雑渡昆奈門。ほら、これで知らない人じゃないでしょ?」
「チッ……ヨイヤミ城所属、A」
「Aねぇ、良い名前じゃないか」
「そりゃどうも。てか名前教えたんだから離れろよ」
「あーはいはい。じゃあ今度お詫びの品持ってくるから、またね〜」
名前を教えると案外素直に雑渡は身を引いた。それに安堵しつつ、Aは二度とこいつと会いたくないと思った。
だがしかし、今後雑渡は宣言通りお詫びの品として手土産を持参し何度もAの元に訪れるのだった。
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レオン(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます。続きを更新しました!続編にてご覧ください。 (2022年8月3日 15時) (レス) id: bc25bf8dca (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 続きが速く見たいです (2022年7月30日 14時) (レス) @page47 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます!更新を喜んでいただけて嬉しいです!これからも頑張ります!!またご指摘もありがとうございます。訂正いたしました! (2022年7月5日 21時) (レス) id: fc3a292471 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 更新嬉しいですー! 29-6の夢主さんの説明のところ「高いく」は「高く」ではないでしょうか? 一応お伝えしときます。これからも無理のない範囲で頑張って下さい! (2022年7月5日 16時) (レス) @page34 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - マイさん» コメント、そして応援ありがとうございます!面白い、好みと言っていただけてとても嬉しいです!!これからも頑張りますのでお楽しみいただければ幸いです! (2022年7月3日 10時) (レス) id: fc3a292471 (このIDを非表示/違反報告)
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