25-3 〈続き〉 ページ4
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着いた先は先程いた木の反対側。そこにはポッカリと空洞があって、中は暗く良く見えない。
「穴か……何かの巣だろうか?」
もし熊などの大型の獣だったら嫌なので迂闊に中を覗けない。
そう思った矢先だった。
「うぅ……ひっぐ……」
穴の中から聞こえたのは啜り泣く声。
ああ、この声だ。私が探していたのはこの声の持ち主だ。
「伏木蔵!!!」
少し前に巣穴かもしれないと慎重になっていたことなど忘れ、私は弟の名前を大声で言いながら空洞の中に入った。
「……お姉ちゃん?」
中にいたのはやはり愛しの弟だった。俯いていた顔をパッと上げた彼と目が合うと、タックルの如く私に突っ込んできた。
「おわっ!よかった、無事だったんだな!!」
「お“ね”え“ち”ゃ”ん“!!!!」
「あーあーそんなに泣かないで?もう大丈夫だから、な?」
ぎゅっと強く抱きしめると伏木蔵も同じように抱き返してくれた。そのことが嬉しくて、腕の中にいる彼が暖かくて、思わず涙が出た。
だけどそんな涙を見られるのはなんだか恥ずかしくて、早々にぐいっと適当に拭った。そしてしゃがんで伏木蔵と目を合わせた。
「……勝手にいなくなって心配した。どこか行くときは声掛けてって言ってるだろ?」
「こ“め“ん”な“さ”い“」
「今後私でも他の誰かでも、一緒にいる人と離れるときはその人に声をかけてから離れること。わかった?」
「う”ん“!!約束する!!」
「よろしい!でも本当に無事でよかった!!」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でた後、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を丁寧に拭いてあげた。
その後は雨が止むまで2人肩を並べて空洞内で過ごした。
「僕ね、お姉ちゃんが見つけてくれるって信じてたの!」
すっかり泣き止んだ伏木蔵はいつもと変わらないかわいい笑顔を私に向ける。それが何よりも嬉しかった。
「そうか信じてくれてたのか!ありがとう」
「でもね、不思議なの」
「何が?」
「お姉ちゃんはさ、いつも僕のこと見つけてくれるでしょ?この前町で逸れたときも見つけてくれたし、今日だって勝手にいなくなった僕が悪いのにこうやって見つけてくれた」
「そうだね。町でも山でも、伏木蔵が迷子になって困っていたらお姉ちゃんが必ず見つけてあげる」
「何で?何で必ず見つけてくれるの?」
「何でって、そんなの__________」
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レオン(プロフ) - 零さん» コメントありがとうございます。続きを更新しました!続編にてご覧ください。 (2022年8月3日 15時) (レス) id: bc25bf8dca (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 続きが速く見たいです (2022年7月30日 14時) (レス) @page47 id: 730adcd2c0 (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - 小桜さん» コメントありがとうございます!更新を喜んでいただけて嬉しいです!これからも頑張ります!!またご指摘もありがとうございます。訂正いたしました! (2022年7月5日 21時) (レス) id: fc3a292471 (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - 更新嬉しいですー! 29-6の夢主さんの説明のところ「高いく」は「高く」ではないでしょうか? 一応お伝えしときます。これからも無理のない範囲で頑張って下さい! (2022年7月5日 16時) (レス) @page34 id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - マイさん» コメント、そして応援ありがとうございます!面白い、好みと言っていただけてとても嬉しいです!!これからも頑張りますのでお楽しみいただければ幸いです! (2022年7月3日 10時) (レス) id: fc3a292471 (このIDを非表示/違反報告)
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