Mt.Fuji/五条悟 ページ30
スーツ姿の男性が去り、静かなバーにはバーテンダーである私と、黒ずくめの男性のみが残った。
「マスター、Spanish Townちょうだい」
「かしこまりました」
背の高いカクテルグラスに乳白色の液体を注ぐ 。バーカウンターに滑らせるようにして渡すと、彼はそのほろ苦い思い出を押し込むようにして喉奥に流し込んだ。
「……君はさ、なんにも聞かないよね」
「と、言いますと」
「言葉通りの意味だよ。怪しい男が二人、連れ立って店に入って来ても顔色ひとつ変えないでないで注文を聞くんだもの」
「ここには色々なお客様が訪れますから。いちいち気にしていては身が持ちませんよ」
それもそうか、と白髪の男性は一人ごちてSpanish Townを一口。サングラスの奥に見える瞳は夜の底のように澱んでいる。
「人の話を聞くのは好き?」
「はい、人並みには」
「じゃあちょっと僕の愚痴聞いてよ」
「構いませんよ」
アルコールが回ったのだろうか、彼はふわふわした口調で昔の話を紡ぐ。時折泣き出しそうな顔をするのは見ないふり。
「___俺はね、世界を壊したいの。この世界は、友だちも仲間もみんな連れていっちゃうから」
悲しいから、嫌なんだ。悲しいから、こわしたいんだ。
小さな子どもが駄々をこねるように繰り返すその姿が酷く哀れで、なんだか手を差し伸べたくなって。
「叶うといいですね」
「うん、ありがとう」
だからせめて。
小ぶりなグラスに真珠色の涙を。その縁に小さな子どもが好きそうな可愛らしいさくらんぼを添えて、彼に差し出した。
「Mt.Fujiです。どうぞ」
作者:色鳥
小説版を読み返してカッとなって書きました。
例に漏れず意味不明です。カクテル言葉好き。
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葡萄ゆづゆ(プロフ) - ささまめ。さん» 時間的に私かな?と思ったので返信させていただきます。滅茶苦茶に嬉しいです、ありがとうございます。最上級のお褒めの言葉、創作者冥利に尽きます。本当にありがとうございます…… (2019年11月14日 20時) (レス) id: 167dee6e94 (このIDを非表示/違反報告)
ささまめ。(プロフ) - 最新話、題名とお話の内容、どちらとも何故か泣きかけました。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。 (2019年11月12日 17時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - はるさめさん» そうなんですね すみませんご解答ありがとうございます 名前がどうだからこの作品を見ないっていう訳ではないのでこれからも読まさせてください 更新頑張って下さい 応援してます (2019年7月14日 23時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - ロゼさん» 他の作者さんについては本人の意向があるだろうし何も言えませんが、私自身短編を書く時はなんとなく名前を出さないように書いちゃいますね。ですが名前を出す際は名前変換を使おうと思っています!解答になっていなくてすみません。引き続きご愛読頂けると幸いです。 (2019年7月14日 19時) (レス) id: 965a17df9d (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - いつも良い話をありがとうございます すみません 質問なのですがこの作品は名前変換がない作品なのですか? (2019年7月14日 19時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:呪術廻戦1周年をお祝いする人 x他2人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年5月12日 22時