未亡人ー弐ー/狗巻棘 ページ29
「ああ、見えるかい?」
狗巻棘の先輩は分かりきったように驚いている彼を見て微笑んだ。狗巻棘は内申焦る、笑える状況ではない。数多の呪いを払ってきたがここまで強大な、里香に比べればマシな方であるが攻撃的な呪いは見たことがないからだ。しかも、中学生時代の頃は呪術は愚かオカルトですら信じていなかった先輩に。
「困ったことにね、結婚相手とその浮気相手とその浮気相手の腹の中の子供と私の両親とえーっと、あと誰だ?兎も角何人もの呪いが重複したらしい。」
何人もの呪いが重複したらしい、と軽く狗巻棘の先輩は言う。がしかし、その時点で異常だ。と狗巻棘は思った。数人の呪いが重複しただけではここまで禍々しいものにはならないのである。今も彼女の背後には市松人形や古びた外国の人形、玩具や男物の腕時計、フライパンなどの生活器具を刺した黒い物体がのしかかるようにいるのだ。
「ふふっ、まあ久々に会った後輩が素敵に成長していて安心したよ。」
髪伸ばしてるみたいだね、と先輩は狗巻棘のマッシュルームになりたての髪をさして笑う。そんなことを言っている場合ではないだろうという言葉を飲み込んで狗巻棘はしゃけ、と呟く。声音が緊張しているせいか、狗巻棘の先輩は顔をしかめた。
「むむ、折角の再開は喜んでくれないのかぁ。」
「まあ彼も思春期ですから、というわけでこちらにサインお願いします。」
「これ市役所提出用かい?凄いね、国公認なんだ。」
「まあ古くから呪術師は存在してますからね。あなたのような事例もいくつかありました。」
「なるほどなるほど、私以外にも愚者がいたわけだ。」
なんの話をしているのか理解できないまま先輩は話を勧め、伊地知の提出した書類にサインした。それを終えた伊地知が退室し、室内には彼と彼女の二人だけとなる。
「なんでここにいるのかって聞きたそうな顔だね。」
「・・・しゃけ。」
「ふふっ、なら話そう。」
伊地知がいなくなったせいか背筋を曲げて両足両腕を組む先輩の変わらない様子に安心しながらも狗巻棘は言いようのない不安を抑えきれない。
何かが、何かが決定的におかしい。
「実はね、私。」
秘匿死刑になったんだ、と。変わらない笑みを浮かべながら先輩が笑う。その言葉に背後の市松人形や男物の腕時計が震えた。まるでその塊から、逃げ出そうとしているようだった。
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作者 アヤ
自分で
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葡萄ゆづゆ(プロフ) - ささまめ。さん» 時間的に私かな?と思ったので返信させていただきます。滅茶苦茶に嬉しいです、ありがとうございます。最上級のお褒めの言葉、創作者冥利に尽きます。本当にありがとうございます…… (2019年11月14日 20時) (レス) id: 167dee6e94 (このIDを非表示/違反報告)
ささまめ。(プロフ) - 最新話、題名とお話の内容、どちらとも何故か泣きかけました。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。 (2019年11月12日 17時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - はるさめさん» そうなんですね すみませんご解答ありがとうございます 名前がどうだからこの作品を見ないっていう訳ではないのでこれからも読まさせてください 更新頑張って下さい 応援してます (2019年7月14日 23時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - ロゼさん» 他の作者さんについては本人の意向があるだろうし何も言えませんが、私自身短編を書く時はなんとなく名前を出さないように書いちゃいますね。ですが名前を出す際は名前変換を使おうと思っています!解答になっていなくてすみません。引き続きご愛読頂けると幸いです。 (2019年7月14日 19時) (レス) id: 965a17df9d (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - いつも良い話をありがとうございます すみません 質問なのですがこの作品は名前変換がない作品なのですか? (2019年7月14日 19時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:呪術廻戦1周年をお祝いする人 x他2人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年5月12日 22時