朝焼けの28時/伏黒恵 ページ12
「おはよう恵」
パサ、と長い髪を顔面にかけてやる攻撃で恵を起こす。……ううん、起きない。
お次は髪の毛を手頃につまんで箒ではくようにしてバシバシと恵の顔面を攻撃してみた。
長い睫毛がピクピク動いたあとにうっすら緑色の眼球が覗く。
「……よう」
「何その反応。マセガキか」
「察しろ」
ここは寮ではなく私の賃貸している(普段の寝泊りは寮なのであまり使わないが)家である。お察しの通り昨日はお楽しみでした。
実は私も恵もこんなことをするのは初めてではない。付き合ってからは初めてだけど筆下ろし?は各々とっくに済んでいるのだ。
「恵は慣れないことしたもんね」
「お前だって慣れてる訳じゃないだろ」
「まあね」
呪術界は死が空気のようにすぐ側に纒わり付く生活なので、適当に他の術師だったりに誘われてとっとと初めては捨ててしまうことが多い。
恵の前だから普段通りに振舞っているが、私だって恥ずかしい。好きな人とこんなことをするのはやっぱり特別なものなのだ。
時計を確認するとまだ朝の4時。夏ということもあってもう既に太陽が昇り始めている。
「1年の最初もこんな風に寝泊まりしたことあったっけ」
「ああ、手違いで一部屋しか取れてなかった時か」
「その時から伏黒結構好きだったんだよ」
「どうせ顔だろ」
バレたか。そう言ってから気づく。こいつ自分の顔がいいことを自覚してやがる。おのれ禪院フェイス。
長い睫毛や細い体に透明感のある緑色の瞳。私を魅了する数々の宝石が今は私のものなのだ。
結構なんて曖昧な表現をいつも使ってしまう。直そうと思ったけどそんな簡単じゃなかった。死ぬために生まれてきた私は未来が見えない。明日が分からない。
前時代的な私の家。女は次の代へ強力な呪いを引き継ぐ為に自らの命を縛りに子を産む。
大きな力を持った家からは逃げられない。結婚は決定事項。記録からして私の寿命は24歳から27歳まで。誰と、とかはまだ決まっていないけど。
私は殺されるなら恵が良いんだけど、彼はきっと責任を死ぬまで背負ってしまうから駄目だ。
それでも私の生きる証が、恵を愛した証がこの世に残ればいいなんて思う。
無理矢理なんてしたくはないけれど時々糞みたいな考えが脳裏をよぎる。ああ、やっぱり私は弱いままだ。
現実から目を背けるように窓に目を向けると、まるで帷をゆっくり解く様に外が黒から色づいていた。
作者:葡萄ゆづゆ
証が残った後は私を忘れて、どうか呪わないで。
幼なじみの会話/五条悟 伏黒恵→←缶ジュース一本分の友情/禪院真希
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葡萄ゆづゆ(プロフ) - ささまめ。さん» 時間的に私かな?と思ったので返信させていただきます。滅茶苦茶に嬉しいです、ありがとうございます。最上級のお褒めの言葉、創作者冥利に尽きます。本当にありがとうございます…… (2019年11月14日 20時) (レス) id: 167dee6e94 (このIDを非表示/違反報告)
ささまめ。(プロフ) - 最新話、題名とお話の内容、どちらとも何故か泣きかけました。いつも素晴らしい作品をありがとうございます。 (2019年11月12日 17時) (レス) id: 953be4ace3 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - はるさめさん» そうなんですね すみませんご解答ありがとうございます 名前がどうだからこの作品を見ないっていう訳ではないのでこれからも読まさせてください 更新頑張って下さい 応援してます (2019年7月14日 23時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - ロゼさん» 他の作者さんについては本人の意向があるだろうし何も言えませんが、私自身短編を書く時はなんとなく名前を出さないように書いちゃいますね。ですが名前を出す際は名前変換を使おうと思っています!解答になっていなくてすみません。引き続きご愛読頂けると幸いです。 (2019年7月14日 19時) (レス) id: 965a17df9d (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - いつも良い話をありがとうございます すみません 質問なのですがこの作品は名前変換がない作品なのですか? (2019年7月14日 19時) (レス) id: baa98cba69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:呪術廻戦1周年をお祝いする人 x他2人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2019年5月12日 22時