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二十六歩 ページ26

それから他愛ない話に花を咲かせた。



「…ん、もうこんな時間か」



時計を見ると午後九時をすぎていた。

あたりはどんよりと暗く、
チカチカと家のあかりだけが灯されている。

先輩は腰をあげる。
俺も同じように腰をあげた。



『帰りますか?』


「うん。待ってる子がいるからね」


『?』


「ふふ。いや、今のは聞かなかったことにしてくれ」



先輩はくしゃくしゃと俺の頭を撫でる。

久しぶりだな、それ。

そうぼんやりと思いながら、玄関に向かった。



ガチャと先輩がドアを開ければ、
冷たい風が入ってくる。

思わず、ぶるぶると身体が震えた。



「色々と悪かったね」


『いえ、それは、もういいです』


「じゃあ、また来てもいいかい?」


『…』


「あ、今めんどくさいって思っただろ」


『違いますよ』



正直、めんどくさいって思ったけど。


すると、先輩はごそごそと懐を探り始める。

なんだろう。

そう思って見つめていれば、
彼は携帯を取り出していた。




「来る時は事前に連絡したいから、
教えてもらえるかい?」



『?』




そこで、ふと違和感を覚えた。


ぐるぐると体の中を駆け巡る目眩に似た感覚。


あれ?何かがおかしい。




『何、言ってるんですか?もう知ってますよね?』


「?いや、君の電話番号もメルアドも知らないけど」


『え?だって、あの、無言電話は?』





「無言電話?そんなことするわけないだろう。
知っていたら、もっと普通に声かけたよ」





え?



何を、言っているんだ?



…あの、無言電話の相手は、


夏油先輩じゃなかったのか?



俺は、てっきり追いかけてくるのと、
電話のやつは、同じ相手だと、思っていたんだけど。



嘘、だ。



そんなこと、ある?



身体が冷える。寒い。


手の先からじわじわと冷えていく。


でも、ドクンドクンと心臓の音は煩くて、
顔は火が出るくらい熱くて。


チカチカと目の前が点滅する。




「大丈夫かい?」




点滅は先輩の手だった。

彼は、プラプラと俺の前で手をふる。



『ぁ…いや、これ、俺のメルアドと電話番号です』


「…何かあったら言うんだよ?
まぁあってからじゃ遅いんだけどね」


『…大丈夫、です』



少し心配そうに、
先輩はそういうと登録して俺に携帯を返した。



「それじゃあ、また」


『はい。気をつけて』



笑って背を向ける夏油先輩。


その黒い背を見送る。




『…』



__手の中の携帯がプルルと震えた気がした。

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- 続き待ってます! (9月18日 1時) (レス) id: 61fc42598e (このIDを非表示/違反報告)
ボブ(プロフ) - 更新待ってます。 (2022年7月12日 21時) (レス) @page36 id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)
すめし - 好きすぎる、、、 更新頑張ってください!! (2022年3月17日 21時) (レス) @page36 id: b2ccf5b6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴえ - 続きが気になりすぎる…!! (2021年7月23日 21時) (レス) id: 13f7b558a6 (このIDを非表示/違反報告)
ボブ - 更新待ってます。 (2021年6月22日 14時) (レス) id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かるーあ | 作成日時:2020年12月27日 9時

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