9.人事を尽くすために ページ9
月末にはテストが待っている5月。
席替えをする今日、赤司君と離れるという少し残念な気持ちでいながらも、これでモブへと成り代われると喜んでいた。
とはいえ、この小説がそんなことさせてくれる訳が無い。
あっさりと先生の口から告げられた私の隣は赤司君という信じ難い現実。
「今月もよろしく」と面白おかしく笑ってみせる彼に「うん、よろしく」と返せばまたもや差し出される手。
そこに私が手を乗せてお手の形をするのがいつの間にかお決まりとなっていた。
「おはよ」
「おはよう」
「相変わらず早いね」
「部活だったからね」
無自覚にかっこいい顔で攻撃してくるからずるい。
じとー、とした目線を送れば頭にクエスチョンマークを浮かべていた。
赤司君と他愛無い話をしていると「赤司」なんて彼を呼ぶ声がドアの方から聞こえた。
ちなみに席は廊下側の1番後ろの席だ。
「緑間」
分かってたよ君だって。
低くても鼻にかかるような甘い声。
何度もその声を聞いていたから分かる。
天使で可愛いツンデレなスリーポイントシューターのしんちゃんのお出ましだ。
「何の用だい?俺に用事なんて珍しいね」
座って話せる距離なのに、わざわざ立ち上がり近寄るだなんて本当に育ちがいい。
「ああ、今日のおは朝のラッキーアイテム…」
「…確か、レインボーのホッチキスだったか?」
赤司征十郎という人物に改めて感心する。
まさかおは朝のラッキーアイテムまで知っているのか。
しかも自分じゃ無いもの。
ありえなさ過ぎて笑ってしまう。
が、そんな感情も束の間
「む、誰だお前は」
笑っていたから気づいたのだろうか。
指さしながらしんちゃんが私を見た。
待って欲しい。
あの、可愛い可愛いしんちゃんが、あの超凄いシュートをする緑間真太郎が…。
私に注目している。
「あ、あ、え、えっと…」
「彼女は白雪A、友人だよ」
私の代わりに私の事を紹介してくれる赤司君。
彼が振り向いた時目が交わればにこりと笑みを向けられた。
「ほう」
対するしんちゃんは手を顎にやり興味深そうに呟いた。
赤司に女子の友人がいることが珍しいのだろう。
めちゃくちゃ分かる。
「俺は緑間真太郎だ、よろしく」
「あ、う、うん」
「で、赤司、レインボーのホッチキスは持っていないか」
差し出された手を取り握手をするとすぐさま赤司君に向き直りまた同じような質問をした。
「残念ながら」
赤司君が眉を八の字にさせて肩を竦めた。
「あ、私持ってるけど…」
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天 - 凄く面白いです!更新頑張ってください! (2020年11月20日 16時) (レス) id: e6de3d2e77 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しお | 作成日時:2020年7月5日 18時