【黒子のバスケ】推しに沸いたら悪役になった (ページ8)

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8.幽霊部員ならぬ幽霊委員ページ8

図書委員になり、初めての仕事。
放課後の本の貸し借りをする仕事だ。
このバーコードをスキャンすることは何回もやってきた。
プロと呼ばれたこともあるぐらいだ。
バーコードリーダーのボタンをカチカチ鳴らしながら遊んでいるとガラリとドアが開いた。

ちらりと入ってきた人を見る。
バーコードリーダーを落としかけてしまった。
そうだ、そうだった。
図書委員は、彼も、いるんだった。

「ど、どうも」

ぺこりと色素の薄い髪の少年が会釈をする。
最初噛んでしまったのは戸惑いからか。
なんてったって、扉が開いただけで彼に気づいたのだから。
正直、これには私もびっくりしている。
彼に気づくのは小町だけではないのか。

「う、うん、えっと」

「あ、黒子、テツヤです」

知ってます。
主人公なんだもの。
まだ幼い彼の驚いた表情が可愛い。

「図書委員…ですよね？」

「あ、はい」

何この空気。
私がヲタバレした時の空気よりもなんか居心地が悪い。
というか歯がゆい。

小町を通してゆるゆると彼らと繋がるはずだったのに、どうして私はこうも自分から。
物語補正的なものなのか。

仕方ない、自分はヒロインでもモブでもなく悪役として生まれた身なのだ。
これぐらいはしょうがないと割り切るしかない。

「私は、白雪Aです、よろしくね」

そして数時間後、

「じゃあテツ君はバスケ部なんだ〜！」

「はい、まだまだ練習しなきゃ試合には出れませんが」

仲良く笑い合う男子生徒と女子生徒の姿がそこにはあった。
こんなはずじゃなかったのに。

図書委員の仕事が終わったあと、昇降口まで一緒に行こうということになりこの会話。
ふわりと笑うテツ君は相変わらず天使だが、ここは地獄である。
もちろん私にとって。

「じゃあ私はこっちだから！」

嘘だけど。
とにかく彼から一刻も早く離れたい。
できるだけモブとして。
それが私の夢なのだから。

さようならと手を振るテツ君に背を向けて歩き出した。

帰り際、「青峰ええええええええええええ」なんて叫び声が聞こえたのはきっと幻聴。

さて、どうやって帰ろうかな。