王子様は知っている 【探偵チームＫＺ事件ノート】

失ったもの ページ13

「アーヤ・・・」

翼は今までにないように真剣な表情で、私を見る。
もしかして、成功するかもしれない。


そう思って、私は熱心にマリンの良いところを言ってみた。

実際、深く見るとマリンのいいところはいっぱいあった。



「マリンは、すごく翼が好きなんだよ。きっと、良い関係になれるんじゃないかな。
OKなら、私からマリンに伝えておくけど。」

翼は、黙っていた。
そして、終始無言。私には、翼の考えていることがわからなかった。



数分後、私はこの事を言わなければよかった。と後悔する。

何故なら・・・・

「こういうのって好きじゃないな。」

視界に映ったのは、恐ろしいほど冷えきった翼の瞳。



「佐田に、本気なら自分で言えって伝えといて。こんなこと頼む奴も、引き受ける奴も、まるっきり気に入らない。最低だ。」

え・・・・



「アーヤ、君のことは友達だって思ってたけど・・・今、それ解消する。」



一瞬、翼の言葉が理解できなかった。

だってそれは、ものすごく予想外な出来事で、想定外のことだったから。




でも、去っていく翼の背中が現実だと痛いほどに教えてくる。



うそ・・・・そんな


私・・・・・たった一人の心の友を失った！




そのあとのことは覚えていない。
けど、朝、鏡の前に立ったら目が腫れていて、泣いたのだとわかった。

学校に行ってもそのことが離れず、私は茫然と時間を過ごした。


『よお』

いつもの、心地良い声。
振り向くと、有佐が笑みを浮かべ、立っている。

『どうやった？』

「・・・」

私は、答えられなかった。

口に出したら、泣いてしまいそうだったから。


すると、有佐は一瞬驚いた顔をした後、気遣うように微笑む。

『・・・うまくいかんかったんやな』

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