ヒーローがログインしました！season2【歌い手】

ヒロイン！５０ ページ4

冷静に戦いながら、ずっと不安なことがあった。

「姫さん、どこにいるんだろう。」

別に姫さんのことを気にする必要も謂れもないけど、それでも一応特別部隊のメンバーだから。

まだ、生きてればいいんだけど。

ちなみに私は今、単独行動だ。

さっきまでうらたさんと一緒だったんだけど、どうやらそらるさんと坂田さんが怪我したらしくて、全然致命傷にはならなそうだけど治療に行った。

いくら私がヒーローだとはいえ、血を飲んでいない状態ではアインゾルダートと変わらない。だから、下手には動けない。

うらたさんも別れ間際に動くのは構わないけど走ったら殺すって言ってたしなぁ。

にしても、思ったより敵兵が強くない。

周囲はこれだけ地獄みたいになってるのに、そこまで強いヒーローもいないようにみえる。

…ただ1人除いて。

モニターで見てた時にも思ったけれど、1人動きがおかしい兵を見た。

柔らかい栗色の髪をした、男。

あの人に近寄った兵が、ぴたりと制止するのがひっかかった。

気のせいかもしれない。でも確かにそう見えた。

急に後ろから足音がして振り向くと、そこには血を流した敵兵が立っていた。

片手に何か持ってるけど、攻撃してくる感じはない。

でも、仲間を呼ばれたりしたら困るから。

「ごめんね。」

ずっと銃を向けると、彼は跪いて懇願するように頭を下げてきた。

その目からは涙があふれている。

あぁ、殺されたくないんだな、きっと。

けどね、君が生きていたら私にデメリットが生まれるかもしれないから。

引き金を引いた。

ぱしゅん、軽快な音とともに血飛沫が散って顔にかかった。

彼の手には武器ではなく、家族写真が握られていた。

ずきり、と心が痛んだ。

あぁ、この人を国で待ってる人がいたんだ。

その時初めて、「殺す」という行為の重さを知った気がした。

「あなたなんかより、本当の家族のいない私が死んだ方がよかったのにね。」

倒れ伏した敵兵にそっと手を合わせて歩き出す。

なんで私、戦わされてるんだろう。

戦うことになんの意味があるんだろう。

なんで私たちは、能力を持ったがために、死刑を下されたために、殺し合いをしなきゃいけないんだろう。

私が戦う理由って、一体なんなんだろう。

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