W - truth - 【ワールドトリガー】

よろしく伝えて ページ37

- 林藤 -

白い空間に二人の男女。
男は色素の薄い髪に、桔梗色の瞳を持った例の捕虜。そして、そのガラスを挟んで相向かいに座っているのは海松色の髪に、檸檬色の瞳を持った女子…高槻”A”だ。二人の様子を伺う俺たちの間には緊迫した空気が漂っている。

何故、このような状況になったのか。それは数時間前に遡る。

捕虜、名をワーデルと言うらしい。ワーデルに聴取を行おうとした際に「高槻Aと話をしたい」と言い出したらしい。この間のこともあり、Aはワーデルとは接触禁止という事になっていた為、条件は飲めないと言えば、それから全く口をきかなくなったとのことだ。仕方なくAに許可を取りに行けばあっさりと承諾し、現在に至る。

別に疑っているわけでは無いが、万が一のために俺と鬼怒田さんの監視に加え、Aのすぐ横で風間と東が待機している。


「…随分厳重だな」

『あんなことがあればね』


「それで、何か？」とAが話を切り出した。落ち着いたトーンで問いかけられた質問にワーデルは余裕のある表情で笑った。こいつはどんな状況でも余裕がある。なぜそこまでの余裕を持っていられるのかは謎だ。


「妹とは話したのか？」

『お陰様で』

「で？どうなったんだよ」

『さあ。…悪いけど長話をするために面会を承諾したわけじゃないんだ』


何かを確信しているようなAの物言いに俺たちは疑問符が浮かべる。そしてAは組んでいた腕をデスクの上に乗せ、ワーデルに顔を近づけ首を少し傾けた。


『”次は二人で殺しに行く”と【本体】に伝えてくれ』


その言葉にその場にいる全員が驚愕する。何を言い出すんだ、と思った矢先ワーデルが大きな声で笑いだした。


「こりゃ驚いた！まさか見抜かれるとは…決め手は？」

『その有力な【サイドエフェクト】で確認してみたらいいよ』

「…本当に、厄介な女だ」


ワーデルはその言葉を皮切りに顔が変わり始める。表情じゃない、髪、瞳、顔つき…まるで別人になっていく。


「我が国の名は”メシャニカ”」


そして最後まで残っていた桔梗色の瞳がAを捉え、狂気的に歪んだ。


「次は、確実に殺す」

『こちらこそ』


その言葉を残し、ワーデル”だったもの”は動かなくなった。残されたのはどう考えでも日本人顔の男性。おそらく、こちらの世界の人間だろう。

その男性を見ているAがどんな顔をしていたのかは、俺達には見えなかった。

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