付き合う責任 ページ34
ｰ 出水 ｰ
水世が頭を下げた。謝罪を述べた。
それを、Aはただ目で追って黙っていた。見下ろす様な形で水世を見ているAの瞳は、言ってしまえば虚無だった。以前の様に怯えてもいない、かと言って怒っているようにも見えなければ、喜んでいるようにも、楽しんでいるようにも見えない。
まるで、“興味が無い”とでも言うように。
「私が今までAにしてきた事は、謝罪して許されることではない事は重々承知してる。何も知らなかったとは言え、許してもらうつもりは毛頭ない。...それでも、この謝罪だけは、受け取って欲しい」
頭を上げることなく、そう言った水世の声は少し強ばっていた。膝の上で握られた手にも、力が入っている。
...怖いと思う、謝るのは。今回はあまりにも、Aが被害を蒙りすぎている。普通なら門前払いされても可笑しくない。それでも水世は、謝る事に拘った。此奴のAに対する気持ちは本物だ。
水世の葛藤を一番近くで見てきたのは間違いなく俺だ。そうさせたのも、俺の言葉だ。だから、俺には此奴に最後まで付き合ってやる責任がある。
「...許してやってくれとは俺からも言わねぇ。だけど此奴の気持ちは本物だ。だから、言葉だけでも受け取ってやってくれないか？」
そう言って俺も頭を下げた。水世と京介が驚くのが見なくてもわかる。めっちゃかっこ悪ぃけど、俺だって人間だ。誰かの為に頭を下げる事だってある。
しばらくの沈黙の後、誰かが吹き出した。
それは隣で頭を下げ続けるチームメイトによく似た、少し細い声。
『まるで、夫婦みたいだね』
「不倫の謝罪か」と続けた声の主は一頻り笑い切ると、「顔を上げて」と優しい声色で言った。恐る恐る俺達が顔を上げると、そこには先程よりやや柔らかくなった表情のAが微笑みながらこちらを見ていた。
そして、徐に目線を逸らした。どこを見ているというわけでは無いが、何かを思い出す様に遠くを見つめる。
『...あの近界民にね、“水世が死ねばよかったって思ってるだろ”って言われたんだけれど』
その言葉に、京介を含めた俺達三人は驚愕する。
あの最後の言葉は、これだったのかと。
『かなり端的ではあるけれど、その通りだと思った。図星だったよ』
Aの続けた言葉と、纏う雰囲気の変化に隊室が一瞬にしてピリつく。
『この際だから腹を割って話そうか、お互い』
瞬きをして再びこちらを見たAの目は何処と無くあの日のAを感じさせた。
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紫苑(プロフ) - お疲れ様でした！めっちゃ面白かったです!!これからも頑張ってください<(_ _)> (2022年4月20日 17時) (
レス) @page46 id: 3be26313f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑞希(プロフ) - 完結おめでとうございます！お疲れ様でした！！うまく言葉に出来ないのだけれども凄かったです！ (2022年4月20日 16時) (レス) @page46 id: ffd23d4fdd (このIDを非表示/違反報告)
あるみく(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初の頃からワクワクしたり、時には泣いたり、綺世さんの語彙力の多さや文の作り方物語の作り方…etcなどに感涙してきました。少し期間が空いてもいくらでも待ちます！勉強頑張ってくださいね！ (2022年4月19日 21時) (レス) id: 1448334fe6 (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 焙じ茶さん» コメントありがとうございます！焙じ茶様の気持ち、しかと受け取りました。私も中々の限界オタクの時がありますから、こうなってしまうお気持ち、お察し致します笑焙じ茶様も体調にお気を付けてお過ごしください。今後ともご愛読よろしくお願いいたします！ (2022年4月5日 0時) (レス) id: d271d60620 (このIDを非表示/違反報告)
焙じ茶 - お体に気をつけて更新頑張ってくださいね！！応援してます！連コメすみません！ (2022年4月4日 20時) (レス) id: 0167f82c96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綺世 | 作成日時：2022年1月19日 0時
