大規模侵攻XXIX ページ30
- 水世 -
目の前に突き付けられた光景は、果たして現実なのか。
そう、自身に問いかけたくなるほどにモニターに映し出されている映像は衝撃的な映像だった。何かの映画やドラマのワンシーンにも見え、どこか他人ごとに思える反面、それに映りこんでいる全員が私のよく知る人物である故に、妙に生々しかった。
我を忘れたようにアイツを怒鳴りつけているAを見て、言葉も出なかった。
只々呆然と、モニターを見つめて絶句しいていると隣で同じく言葉を失っていた出水が私に質問を飛ばした。
「Aって怒ると昔からあんな感じなのか…？」
出水のその問いに、私はモニターから目を離さずに首を横に振る。
「そもそも怒ることも殆ど…喧嘩なんてしたことなかった…Aがあんなに怒ってるのは初めて見る…」
Aは昔から、”怒り”という感情に耐性があった。つまり、我慢強かった。私や兄がAの物を取ったり、食べてしまったりしても、体が弱いことをクラスメイトにからかわれた時も、馬鹿にされても、Aは怒ったりしなかった。今思えば異常なことだけど、当時の私を初め家族・教員・友人一同「大人な子」と思っていただけだった。
そして馬鹿にしたり、からかっていた子たちはいつの間にかAには近づかなくなった。段々ではなく、ある日を境にめっきりと。嫌がらせとかが利かないからつまらなくなってやめたんだと、ずっと、そう思ってた。
違う。そうじゃなかったんだ。
目の前で起きていることが、幼少期にも起こっていたんだ。
抑えて、抑えて、溜まりに溜まったその怒りのゲージが満タンになった時、その怒りは常人では比にならないほどの威力で爆発をする。今のように殺意には達していないにしても、小中学生の少年少女には、トラウマになるレベルでそれは炸裂していたんだろう。あの時感じていた”Aに対する怯えたような視線”は今、確信に変わった。
どうにかしなくてはと私がもたもたしている間に、Aはアイツから引き剝がされ、犬飼先輩と海君よっては押さえられていた。Aは暫く抵抗をしていたけど、トリオン体の力には勝てずあっさり押さえられてしまった。
《なんで…》
偶然つながった犬飼先輩の無線からAの声が流れてきた。血走っていた瞳はいつの間にか、悲哀に満ちた目に変わっていた。
＿＿＿＿＿《なんであの時…私を殺してくれなかったの…》
悲痛なその声と言葉に
私の頬を、何かが伝った。
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紫苑(プロフ) - お疲れ様でした！めっちゃ面白かったです!!これからも頑張ってください<(_ _)> (2022年4月20日 17時) (
レス) @page46 id: 3be26313f4 (このIDを非表示/違反報告)
瑞希(プロフ) - 完結おめでとうございます！お疲れ様でした！！うまく言葉に出来ないのだけれども凄かったです！ (2022年4月20日 16時) (レス) @page46 id: ffd23d4fdd (このIDを非表示/違反報告)
あるみく(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初の頃からワクワクしたり、時には泣いたり、綺世さんの語彙力の多さや文の作り方物語の作り方…etcなどに感涙してきました。少し期間が空いてもいくらでも待ちます！勉強頑張ってくださいね！ (2022年4月19日 21時) (レス) id: 1448334fe6 (このIDを非表示/違反報告)
綺世(プロフ) - 焙じ茶さん» コメントありがとうございます！焙じ茶様の気持ち、しかと受け取りました。私も中々の限界オタクの時がありますから、こうなってしまうお気持ち、お察し致します笑焙じ茶様も体調にお気を付けてお過ごしください。今後ともご愛読よろしくお願いいたします！ (2022年4月5日 0時) (レス) id: d271d60620 (このIDを非表示/違反報告)
焙じ茶 - お体に気をつけて更新頑張ってくださいね！！応援してます！連コメすみません！ (2022年4月4日 20時) (レス) id: 0167f82c96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綺世 | 作成日時：2022年1月19日 0時
