W - truth - 【ワールドトリガー】

大規模侵攻XIV ページ15

- 木崎 -

戦線から離脱してから、俺と京介はずっとAと人型の戦闘を見ていた。
Aは狙撃手でありながら、その持ち前の頭の良さで攻撃手寄りの敵を一人で相手にしていた。そして先程、人型をディスパーションで仕留めた。


「本当に一人で…」


宇佐美がモニターを見ながらそう呟いた。
ブランクなど全く感じさせないその戦い方に、俺も京介も安心した半面少し驚いていた。援護や防衛を主としてこの玉狛第一で立場を確立していたAが、一人でここまで戦うことが出来たという事に。狙撃手の奴らが「Aは多分ちょっと鍛えれば攻撃手できますよ」と言っていたことがあったが、大いに納得した。

まあ、ここまで”攻撃的なA”は初めて見たがな。
一連の戦闘には、確かな”殺意”が感じられた。普段大人しく、受け身な印象が強いAからは到底考えられない作戦、言動、行動だった。


《目標撃墜確認…微動だにしないけど気絶してる…？》


無線越しにスコープ越しに人型を確認したAがそう言ってきた。換装が解けて地面に落ちた際打ちどころでも悪かったか？
「確認してきます」と言ってAが人型の元へと向かう。撃ち抜かれてすぐに換装が解けたようには見えなかった。だとしたら降参の意思表示か？どっちにしろ、確認する必要がありそうだ。

Aと視界をリンクさせ画面に映す。
倒れてうつ伏せになっている人型は、Aが言う通り全く動かない。足音が近づこうが、Aが声をかけようが全く反応が無い。気絶か、将又死んでしまったのか。


《おい…っ？！》


Aが人型の傍にしゃがみ、揺すり声をかけるとAの声にならない驚きが聞こえてきた。


「どうしたのAちゃん？」

《こいつ…人じゃない！！》

「え…？」


Aが倒れていた人型をひっくり返すとそこには顔のない、マネキンのような”人の形をした”おそらくトリオン兵であろうものだった。
どういうことだ…本体は…いや、そもそも本体なんているのか？驚きながらも思考を巡らせていた俺たちの耳にこの場にはいない声が響き渡った。


〈A後ろ！！！〉


その声に反応してAが振り返り、リンクした視界に入ってきたのは先程と全く同じ姿をした男の姿。そして、そいつはもう目の前まで迫っていた。


〈”お前達”の負けだ〉


そう言って振り下ろされたブレードによって視界に亀裂が入る。

そして次の瞬間、画面が砂嵐を映した。

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