W【ワールドトリガー】

絶対的タブーワード ページ5

ｰ 出水 ｰ

隣を歩くチームメイトの機嫌は最悪だ。

別にその不機嫌を当たり散らすような奴じゃないし、何なら何でもないような顔をしてることが多い。

しかし今日は、内容が内容だ。


「お、水世ちゃんと出水君来たね〜」

「思ったよりも早かったな」


隊室には既に太刀川さんも柚宇さんも居て、いつも通り声を掛けてくれる。俺が挨拶を返せば、水世も同じ様に返す。
そして水世は、鞄を綺麗に整えられた自分専用のスペースに置くと直ぐに換装をした。


「ランク戦してきます」


誰の返事を待つことなく、水世は隊室を去って行った。
その様子を見ていた太刀川さんと柚宇さんが水世が居なくなると同時に俺を見た。


「今回は誰が踏んだの、地雷」

「Aの方の担任が...」

「あー...なるほどな」


太刀川さんも柚宇さんも納得がいったように困った顔をする。

高槻 水世。
ボーダーが新しく設立された年に入隊した結構古参の隊員であり、トリオン量が売りのうちの万能手。
気さくで明るく、溌剌とした態度でかなり好感度の高い奴だが、絶対に触れてはならない“地雷”が存在する。


＿＿＿＿双子の姉、高槻 Aだ。

玉狛支部に所属する狙撃手で、トリオン量こそ少ないが技術面でそれを補ってる割とすげー奴。

こいつの話題は、水世の前では絶対タブーとなっている。俺と水世が初めて会った時からこんな感じたから詳しい理由は知らない。

でも聞いた話では「大規模侵攻でAが彼奴らの両親を見殺しにして逃げた」って事らしい。

Aは理由も無くそんな事する奴とは、去年同じクラスで関わってきた感じ到底思えなかった。
でもA自身も、その時あったことを語ろうとしない辺りちょっと気になるけど、俺たち部外者が簡単に踏み込めるような領域じゃない。


「...なんか、こっちが悲しくなる〜」

「悲しくなるっつーか気ぃ遣うよな」

「太刀川さん気とか遣えたんだ〜」

「言うなー、国近」


呑気に会話をしている2人を他所に、俺はソファーに座ってスマホを起動すれば、京介からメッセージが入っていた。

京介配布物、届けときました

京介には本当に申し訳ないと思ってる。今日は絶対に俺は届けられなかったからな。俺が「ありがとな」と返信すると、珍しく直ぐに既読が着いた。

京介Aさん、薬の量増えてました。学校とかでなんか変だったらよろしくお願いします。


京介のメッセージに、俺は心配でため息をつくしかなかった。

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