俺がお前を愛してやる。(吉良ヒロト)

深愛１０ ページ10

目の前に少し不満そうな表情を浮かべた吉良さんが写る。

何でって、それは…。


｢…か、顔を見られたくないからです。｣

確かに彼の言う通り、私はよく下を向いている。

目が合うと絶対逸らしてしまうし、死んだような目を見られるのが嫌だったから。

だから前髪を長くして、下を向き目をあまり見せないようにしていた。


吉良｢何で見られんの嫌なんだ？｣

目を合わせそうとしてくるが私は全力で逸らしてしまう。

｢私の目、濁ってて気持ち悪いから…です。｣


ポツリと呟くように話し、吉良さんの体からゆっくり離れた。

｢…もうそろそろ、自分の部屋に戻ってください。｣

彼の顔を見ず、背を向けて言い放った。


吉良さんは何も言わず、ベッドから立ち上がった音がした。

こんな空気になったら流石に出ていくだろう。

ドアの開ける音がし、出ていくと思いきや吉良さんは背を向けたまま突然立ち止まった。


吉良｢お前さ、自分の目は気持ち悪いって言ったよな？｣

｢…それが、どうかしましたか？｣

何を言われるのだろうと、緊張が走り次の言葉を待った。


吉良｢…俺は、お前の目好きだぜ？綺麗だし。｣

｢……え？｣

吉良｢また抱いてやるよ。じゃあな、しっかり休めよ。｣

不敵そうに笑いながらドアを閉めた。


目が好き…。

そんな事言われたの、初めて…。

親からはお前の目は俺たちを不幸にさせるとか気持ち悪いとか散々言われて続けていた。

お世辞でも、ちょっと嬉しかった。


…ふと時計を見ると、針は十二時前を指していた。

いけない、そろそろ寝ないと。

私は寝る準備をして、電気を消しベッドに入った。



…吉良さんの体温が、まだ少し残っていた。

暖かったな…。

今まで感じたことない人の体温を初めて肌で感じた。

吉良さんの香りとぬくもりに包まれた感覚が忘れられない。

そういえば、お願いっていうのはなんだったんだろう…？

それ聞くの忘れてた。

男の人の考えている事がよく分からない。



私は…人から抱きしめられた記憶が無い。

普通の家庭なら、親から子供を愛情表現として抱き締めるってことはよくあるかもしれないけど、私の家ではそういうのは無かった。

私は誰からも愛されてないんだ。

必要ともされてないし、どこかで静かに息を引き取っても誰も悲しまない、そういう存在に等しい。

捨てられた人形と近い感じがする。



……考えるのはこれくらいにして、今日は寝よう。

ゆっくり目を閉じ、静かに眠りについた。

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