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「嗚呼いけないね。せっかくのドレスが汚れてしまうじゃないか。」

声の聞こえた方向を向くと、白衣を着た男が立っていた。

「リン、タロ、ウ?」

整っていない髪型に無造作に生えた髭。一瞬誰か分からなかったが、声で気がついた。

「誰だてめぇ?」

鴎外は、銃を持った男達に目もくれず、真っ直ぐにAの方に向かってきた。

「可哀想に、怖かったねぇ。痛いところはないかい?怪我はしていないかい?」

Aの頭を優しく撫でた。暖かな手だ。リンタロウの手だ。

「リン、タロウ………」

じわじわと涙が溢れ、零れた。先程の涙よりもあつい、嗚咽混じりの泣き声。子供のような、泣き声。
この感情はなんだろう。鴎外が来た瞬間、心が暖かくなった。ストンと何かが落ちたような。
すると、鴎外はAを抱きしめた。

「Aちゃん、ここから走るとエリスちゃんがいる。絶対に振り返ってはいけないよ、真っ直ぐ走るんだ。」

耳元で鴎外が囁くと、Aは「はい」と答えた。

「いい子だ。
さぁ、行っておいで。」

背中をぽんと叩かれた後、全速力で走った。後ろから男の声が聞こえたが、無視して走った。

「A!こっちよ!」

エリスちゃんが車の傍に居るのが見えた。ドアが開いた瞬間飛び乗った。息が荒く、なかなか止まらない。
数年ぶりの涙と、太陽のせいで一気に疲れが出た。身体が重い。

_ああそう言えば、あの気持ちは結局なんなんだろう。嬉しい、嫌だっていう感情は、なんなんだろう。いつか、分かる日が来るかな……

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設定タグ:森鴎外 , 文スト , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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あとり(プロフ) - さらささん» ありがとうございます;;ちょっぴり苦いお話にしちゃってすみません;私の確認不足でした… あああ本当ですか!嬉しいです……!!これからも精進して参ります! (2019年12月15日 19時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)
さらさ - すてきな話をありがとうございます 森さんも夢主ちゃんもお互いに想いあっているみたいだけど色んな思いが交差してもう一歩踏み出せない感じですね リアル感があってとてもいいです いやあ 作者様の文才がうらやましいです これからも無理のない様に頑張って下さい (2019年12月13日 15時) (レス) id: a0220cc930 (このIDを非表示/違反報告)
あとり(プロフ) - 白しらすさん» ありがとうございます!!とても嬉しいです…! (2019年10月26日 17時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)
白しらす(プロフ) - ( ゚∀゚):∵グハッ!!かわいい...かわいいぞここの森さん!!!!!好き!!!!!! (2019年10月25日 1時) (レス) id: 71d6bb7d16 (このIDを非表示/違反報告)
あとり(プロフ) - 凛さん» ああああありがとうございます;;上手くかけてるかとても心配だったので嬉しいです;;こちらこそリクエストありがとうございました! (2019年10月18日 21時) (レス) id: e8ffd9f451 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あとり | 作成日時:2019年6月16日 23時

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