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「…………」
少年は、何かを言おうとした。
でも、直ぐに口を閉じた。
ざぁ、と風が吹く。
花びらが地面に打ち付けられる音と、着物や書生服の衣擦れの音がその場に響いた。
「…………綺麗なのはわかってるの」
ぽつり、女性が口を開く。
「でも、私が桜を好きになることはないわ」
「…………」
少年はじっと女性の顔を見る。
女性の瞳の奥は、光が入ってなかった。
「……貴女は、桜を見ているようで別の何かを見てるような気がします」
「あら、貴方鋭いわね」
少年は複雑な表情を浮かべる。
「……もしかして、貴女はこの桜に何かを重ねて見てるんですか」
「……えぇ」
「……それは、貴女の弟ですか?」
「いいえ」
「貴女の家族ですか?」
「いいえ」
「貴女の友達ですか?」
「いいえ」
「……貴女自身ですか」
「そうよ」
女性は綺麗な雫を瞳から一粒落とした。
「私、桜の花びらが全て落ちる頃にはね。
……死ぬの」
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偉人 - この占ツクにこんな素敵な文章を書く方がいらっしゃるなんて…この作品に出会えてよかったです。 (2020年9月5日 16時) (レス) id: 071f62e8cb (このIDを非表示/違反報告)
メビウス(プロフ) - なつかさん» コメントありがとうございます!!そう言っていただいて本当に嬉しいです!!今作品も最後まで好きって言って貰えるように頑張ります!! (2019年3月25日 20時) (レス) id: 75ad7ad27c (このIDを非表示/違反報告)
なつか - 前の作品もこの作品もすごく好きです!頑張って下さい! (2019年3月24日 18時) (レス) id: d7e54bb1e1 (このIDを非表示/違反報告)
メビウス(プロフ) - 世理さん» コメントありがとうございます!!「新作」って言ってくださるってことは、過去の作品を見てくださっているんですね!凄く嬉しいです(∩´∀`∩)ワーイ!頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年3月21日 0時) (レス) id: 75ad7ad27c (このIDを非表示/違反報告)
メビウス(プロフ) - 寧々さん» コメントありがとうございます!!これから亀更新になるかもですが、暖かく見守ってください笑 (2019年3月21日 0時) (レス) id: 75ad7ad27c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:メビウス | 作成日時:2019年3月20日 1時