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日本の端っこの小さな町で僕は生まれ育った。



父親は僕が小学校に上がる頃にパタリと帰ってこなくなったからあんまり記憶はないけど、

小学校入学祝いに家族で食べに行った中華屋さんの味はまだ鮮明に覚えている。



母親は近くの病院で事務をしていた。

僕とおばあちゃんを養うために朝から晩まで働いていたけど、

ちゃんと毎日美味しいご飯を作ってくれて、

ちゃんと毎朝僕を学校に送り出してくれた。

優しいお母さんだった。


だけど唐突に態度が豹変する時があった。


「あたしがあなたを養うのにどれだけのお金が掛かっているかわかってるの!!?」

「あなたはどうせあたしのことなんて嫌いなんでしょう!!」

「誰かあたしを助けてよ!!!!」


「Aもどうせあたしを置いていくんでしょ!!?あの人みたいに!!」



母親はヒステリックな人だった。

愛に飢えていて、

ぶつけようのない寂しさの矛先を仕方がなく僕にぶつけていた。


そしてぶつけ終わった後にいつも泣きながら謝るのだ。

ダメな母親でごめんなさい、と。



僕はいつも笑顔で母親を励ました。


だけど、心の端っこには常に小さな穴が空いていた。

僕はいつもその穴を埋める何かを探していた。

同時にどこかでどうせ埋まるはずがないと諦めていた。




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作者名:名も無き者 x他1人 | 作成日時:2021年10月18日 17時

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