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「君が小南桐絵ちゃん？」
「そうだけど。」
柔らかな笑みを浮かべた青年はまだあどけない少女に話しかけた。
「俺は真谷悠人。
今日はいないんだけど、桐絵ちゃんより3つ下の妹がいるんだ。
できれば仲良くしてやってほしい。」
「･･･あんたはボーダー関係者？」
「正確に言うと、関係者の関係者？みたいな感じ。」
なにそれ、と呟いた小南に悠人もよくわからないね、と笑った。
小南が悠人の妹と会ったのはそれから数日後のことだった。
「A、ちゃんとご挨拶しろよ。」
「わかってる！」
悠人に手を引かれて入ってきた少女は、悠人によく似た柔らかい笑みをのせていた。
「真谷Aです。
よろしくお願いします。」
小南より3歳年下のその少女は、
歳のわりにはやけに落ち着いていた。
「悠人くんとAちゃんは大宮財閥の子どもさんだ。」
「え、でも名字･･･。」
「学校ではそのことを隠しているらしい。」
「真谷は母の旧姓です。」
大宮財閥の息子、娘、というだけでいじめやパシリの対象になることがあるらしい。
「でも、なんで急にここに？」
「両親が仕事のときに面倒を見て下さっていたお手伝いさんが亡くなったんです。
それで林藤さんが呼んで下さって･･･。」
「あんな広い家にふたりきりなんて寂しいだろ。」
ぽんぽん、と林藤に頭を撫でられたAは嬉しそうに頬を緩めた。
「ふたり寂しかったからうれしい！」
「よかったな、A。」
「うん！」
その溌剌とした笑顔が、
絶望に落とされるようになったのはそれから数年後のこと。
大規模侵攻で彼らの父親が死んでからのことだった。
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作者名：名も無き者
| 作成日時：2021年2月7日 23時
