あめふり坊主【赤】

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放課後になると、部活に入っている希ちゃんと秋ちゃんは「じゃあね！」と足早に教室を出ていってしまう



私は手を振ってそれを見送るだけ




降り続く雨は、今日は止まないのかな？




そんなことを考えながら、私は帰りもお気に入りの傘を開いて歩き出す





水たまりに入らないようにちょっと急ぎ足で





今日はみたいドラマがあるから早く帰りたい






少しにやけ顔で駅に向かった








『ドアが閉まります』






「あ、ま、まって！」






ギリギリセーフで乗りたかった電車に間に合った




どんなにギリギリでも、やっぱり私の足は七号車の2番目のドアに向かっている





もうすっかり癖みたいだ






「よいっしょ」







朝とは違って誰も乗ってない電車



遠慮なく座らせてもらった






いつも帰りはこの電車の2本後だから、この時間ってこんなに空いてるんだぁ、なんて呑気に考えながら音楽プレーヤーを取り出す




イヤホンをさして、お気に入りの曲をかければ

なんだか幸せ気分







・







『小町ー、小町です』







次の駅に着いたけど、誰も乗ってこない



ずっと1人の七号車



寂しいけど、なんだか自分だけの世界みたいで楽しい





「……ふふん……ふーん」






誰もいないことをいいことに軽く鼻歌なんかしちゃって



思わず笑った




窓の外をみれば、相変わらずの神様の涙









・








『桜台ー桜台です』





いつもならここは誰も乗ってこないんだ


2本後の電車なら





なのに






今日は違う








「…………っ！」









・









「はぁ……はぁ……」








少し息を切らした、雨のお兄さん



手にはあの赤い傘がある





キョロキョロとあたりを見回してから、私の向かいの席に座った







『発車します、閉まるドアにご注意ください』








ーガシャン









閉まったドアに、2人だけの空間に、静寂な空気




私の耳からは音楽が流れてるはずなのに、そんなもの聞こえなくて





つい、参考書を出して読んでいる彼を見つめた

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