あめふり坊主【赤】

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「…………」



「…………」






何も出来ないまま約10分の時を過ごした


傘から落ちた雫出来た小さな水たまりを見て思う






……話しかけたほうが、いいかな


……はなしかけても、いいのかな






どきどきが止まらない左胸の校章をぎゅっと握る

俯いたままの私



どうしよう




あと二駅





……どうする









・








イレギュラーなことが起きて、ずっと心中で葛藤しているけど、



時間は待ってくれなくて



気づけば次は美桜




彼の乗ってくる駅であり、それはつまり


彼が降りていく駅でもあるわけで




私の話しかけるかどうかという問題の解答時間は迫りつつある








『次は美桜ー、美桜です』








「…………っ」






早いよ……早いよ！車掌さん！！



ちらっとまた彼を見れば、まだ参考書を必死に読んでいる



もしかして先輩かな……？


受験生かな……？








ここではっと気づくこと








・









……私、あの人こと


何も知らないんだ









・








「…………」





いいの？私



朝にはないチャンスが今ここにはあるのに




いいの？私




雨が降らなかったら彼に会えないんだよ









゛ずっと好きなんです ゛



゛連絡とか、交換してください ゛









きっと簡単な言葉




口に出せば伝わる







でも、それが言えないなんて




女の子は少しめんどくさい……







・








『美桜、美桜です』





ぴたりと止まったところでドアが開く



立ち上がって器用に参考書をバッグに入れながら電車を降りていく彼





はぁ……どうしよう、どうしよう






頭を抱えて悩んでみるけど、勇気がでない……








ぱっと顔をあげて彼の座っていた席を見つめる







ああ、さっきまでそこにい…………ん？







立ち上がってその席に近づくと、財布が落ちていた



チャックの部分には、有名な神社のお守りと

鳥のキーホルダーが付いている







これ……お兄さんの、だよね？









「……どうしよ」







あと10秒できっと扉がしまる









どうしよう、どうしよう…………どうしよう









・







『電車が発車します』


『閉まるドアに……』









・









゛次会う時はちゃんと話しかけるんだよ？ ゛









「…………っ」









・









「あの！！」




「え？」




「お、お、おお落としました！」

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