【あんスタ】薔薇王子。【男主】

１９。 ページ22

事務所に来ると早速社長室まで行けということを知らされた。









「デビュー前なのにドラマ出演なんて、Aくん、やっぱりここ一番で良い若手アイドルだよ」

『ありがとうございます』

「僕はこれからも君を応援しているよ」









事務所の社長にポンポンと頭を撫でられる。






ここの事務所は、世間から見ても大きい事務所で多くの有名アイドルがここから排出された。

名前はコズミック･プロダクション。略してコズプロ。
基本、夢ノ咲学院ではない学校に通っている生徒が多い。











「じゃあAくん、これからも良い仕事っぷり期待してるから」

『ありがとうございます』









カチャ、と扉が閉まってから口角が自然と下がり真顔になる。





……つまらない。




あの人の機嫌に気を使って、俺が人気になるようにやることは何でもして、だなんて本当に疲れる。

仕事だからやるしかないけれど。









『今度は、ドラマか……』









台本を見る。



正直、ドラマに出るのは初めてだ。

主役とまではいかないけれどそこそこ出るライバルの役。









『……「不毛な恋は、すぐ側で隠されている。でも、どうせ誰も俺の恋にはみんな気づいてくれないんだろうね」』









恋、か。


この俺の役は長年一人の女に恋をしてたくせに見事当然出てきた男に取られた惨めな奴らしい。









『だっさ』









一番ダサい振られ方。


告ることも出来ないで取られるとか。長年拗らせといて諦める以外方法がないなんて。







でも、俺も恋をしたらこんな感じなのかもしれない。


好きなのにどうせ無理だと決め付けて諦める。









『……ダサいなぁ』









本気で欲しいものなんて今まで無かった。


金は仕事で貰えて、仕事は媚び売れば貰えて、でも、その金ですることなんて特にないし生活最低限いる物に使うだけ。





せめて仕事くらいやりたいものを選びたかった。

しかし、俺は大した頭でもないし性格も悪い。







それに、俺には









『顔しか取り柄がないから』









努力をすればなりたいものにはなれるだろう。


でも、一番楽な選択肢を選ぶのが最善策だ。









『明日ものうのうと生きているんだろうな』









そして眠りについた。

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