【◇】2度と忘れることのない君へ (ページ19)

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今シーズン俺はたくさんのファンに見守られた中引退をした

ベテランと言われる域に来て身体が思うように動かなかったり
すぐに息切れを起こしたり…
野球を楽しめなくなりそうになったから引退を決めた

初め、Aに相談をした時は「すきにすればいいよ」
そんな言葉をかけてくれたっけ

結婚してもう11年

俺らを繋いでくれた凛也

Aそっくりで可愛い華恵

俺そっくりな優也

可愛い子供たちに囲まれて、なによりAが側にいて

一度離れたから分かることは隣に大事な人がいることが
どれだけ幸せかってこと

「ぱぱ？」

「ん？」

目に入れても痛くない程可愛い愛娘はこれまた可愛い顔をして

「このお魚さんはサメ？おっきいよ！」

「そうだなぁ、ジンベイザメって言うんだぞ」

家族で久しぶりに水族館

娘を抱き上げれば

「もう！恥ずかしいよ！下ろして！」

「え、」

…こうやって大人になっていくんだな

え、どうしようおれ、華恵が嫁に行く時どうしよう

娘を持ってわかったことはAの家族は
よく結婚することを許してくれたなってこと

「ねぇ、ぱぱジンベイザメって美味しいの？」

うちの次男はなんてことを言うんだ！

「これは食用じゃないよ」

「しょくよう？」

「食べるための魚じゃないってこと」と説明をすれば
ふーん、と華恵と共に凛也の元へいってしまった

「ねぇ、ぱぱ」

「…お前のぱぱじゃねぇし」

振り返れば愛おしい妻の姿

にししっと笑い

「凛也がいなくなると寂しくなるねぇ」

「そうだな…2人共泣いて嫌がるんじゃないか？」

容易に想像がつくところが怖い

俺は兄弟いなかったけどこんな感じなのだろうか、兄弟って

「ほんと、いい子に育ってくれたよね
一也の血が流れているというのに」

「こらこら、どういう意味だ」

Aはクラゲを見てはしゃぐ2人となだめる凛也を見て

「昔、大学生の時ここ来たよね」

「あぁ、最後のデート…だった」

「うん、あの後私は消えちゃったけどまたみうきが見つけてくれた」

「みうきって…いつの話だよ」

なんとなく照れくさくて頭を掻けば

右手が彼女の左手と繋がる

「外で繋ぐなって言ってたじゃん」

驚いて彼女を見ると彼女は

「いーの！繋ぎたくなったんだもん！」

あれから12年、結婚してから11年

Aは俺に絶え間なく笑顔を見せてくれている

_______ありがとう

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