悲劇 ページ42
豊臣秀吉の死。
この乱世を狂わせるには十分過ぎる事実だった。
その場の誰もが目を見開き、硬直する。
一人は驚きと後悔で食い入るようにそれを見、
一人は悲しみと憎しみに打ちひしがれ、
一人はその事実を呪い、
一人は己の未熟さを悔いた。
おそらく、いや確実に、
その者の名は歴史に色濃く刻まれるだろう。
この乱世のなかに生まれ堕ち、そして"絆"を説き、
絆で人を殺した者として
徳川家康の、その名前が。
<亜噂視点>
間に合わなかった。覇王は今ここで、殺された。
亜噂がいながら、徳川殿を止めることができなかった。
その目の前のことに困惑する。
「……徳川……殿……」
そんな情けない声しか出ない。
頭巾を被った徳川殿は、まるでこの世の乱戦が終わったかのように清々しい顔をして
ニッコリと笑っていた。
「何でだし…何故?!」
「何故…か。それは簡単だよ亜噂。」
…何だろう。幻覚、か?
徳川殿の頭巾が黒い。
「覇王が邪魔だったからだ。」
いつも太陽のような黄金色が、混沌の如く黒い。
黒権現……不意にそんな言葉が脳裏に浮かぶ。
まだその事実を飲み込めきれてない頭を精一杯動かして、今自分がすべきことを考えなければ。
「…秀、吉………」
「秀吉…様……?!秀吉様……!何故……そのような……?!」
「……気を確かにしやれ三成。」
「違う……違うよな、刑部……こんな……」
「落ち着け三成。今は落ち着け。」
軍師殿は絶望感に堪えながらも知恵を廻し、
凶王はその場に立ちつくし、その光景を信じまいと首を振る。
その傍らの刑部は声を落とし、怨念と殺気を滲ませている。
……嗚呼、混濁だ。
これが徳川殿が皆に与えたかったものなのか?
いや…違うはず。こんなことをしたいんじゃないはず。
止めなくては。今からでも。
「徳川殿…いや、家康!!」
「……?何だ?」
「…亜噂が…お前を止めてみせるし…!!」
「そうか。オマエもワシの邪魔をするんだな」
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らん(プロフ) - おもしろかったです!やっぱり佐助は良い奴(*´ω`*) (2020年8月15日 23時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - らんさん» それは次のお話で明らかになりますよ!今回もコメントありがとうございます! (2020年8月15日 18時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - お久しぶりです!面白かったです! 猿飛佐助は、今後仲間に入りますか?!(ネタバレすみません) (2020年8月15日 8時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - かえこ(弟)さん» ありがとう。お前は早く勉強しろ? (2020年8月4日 11時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(弟) - 面白かったです マタオネガイシマス (2020年8月4日 11時) (レス) id: 1df8178e6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえこ x他1人 | 作者ホームページ:ホームページ?ナニソレオイシイノ?
作成日時:2020年5月23日 21時