夢 ページ37
「だから、A様は今までに一度たりとも人を殺したことはないですし。」
亜噂のその一言に、やはり辺りはざわめいた。
あの強さをもって、そしてこの乱世に、しかも天下を狙うのに、人を殺さぬ者がいたのか。
それは革命的なことだった。
「A様とは幼い頃からずっと一緒でした。この亜噂が証人ですし。」
「…にわかには信じられないな。人を殺さずに天下とは…驚いたよ。」
「有り得ぬ」
覇王、豊臣秀吉が口を開く。
亜噂はその滲み出る威圧を感じていた。
「天下を狙う者ならば必ずしも戦をしなければならぬ。そして戦には死人が必要だ。」
「…何が言いたいのでしょうか」
「考えが甘いと言っている。…半兵衛、行くぞ。」
「ああ…。皆はここで待機しておくように。…くれぐれも、賢明な判断をしてね。」
亜噂は静かに閉められた襖をじっと見つめ、ふっとため息をついた。
…考えが甘い、か。
確かにそれは亜噂も思っていたことだ。A様の夢は、所詮は夢なのではないのかと。
-----------------------------------------------
『亜噂！こっちだ！』
「待ってくれし、A！」
『はははッ！亜噂は遅いな！ほら、こっちだぞ！』
「あの体力はどこから湧いて…ッ！！」
Aは幼い頃から亜噂と共に育って来た。
偶然同じところに捨てられていたらしい。
Aはとても強かった。いや、それは今もだが、前からも強かったのだ。
師匠の訓練に真っ先に食らいついて行ったのもAだ。
『私はな、亜噂。』
「ん？何だし、急に。」
『私はこの世を変えたいんだ。民が血を流すことのない…そんな世だったらいいと思わないか？』
そう語る目は誰よりも優しく、強い目だった。
「ふぅん。でもそれは到底無理だし。こんな乱世じゃあ、民の暮らしも良くなるわけがないですし。」
『いいや。無理じゃない。私が乱世を終わらせるからな！！』
そう言っていきり立つから、あの時は驚いた。
『私が天下を取る。そしてこんな乱世を終わらせてやる！！お前は重臣だぞ、亜噂！』
「へッ？！亜噂も巻き込まれるのか？！」
『当然だ。そうと決まれば、戦闘訓練だぞ亜噂！！ほら、構えろ！』
嗚呼、こんなこともあったなあ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らん(プロフ) - おもしろかったです！やっぱり佐助は良い奴(*´ω｀*) (2020年8月15日 23時) (
レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - らんさん» それは次のお話で明らかになりますよ！今回もコメントありがとうございます！ (2020年8月15日 18時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - お久しぶりです！面白かったです！ 猿飛佐助は、今後仲間に入りますか？！(ネタバレすみません) (2020年8月15日 8時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - かえこ(弟)さん» ありがとう。お前は早く勉強しろ？ (2020年8月4日 11時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(弟) - 面白かったです ﾏﾀｵﾈｶﾞｲｼﾏｽ (2020年8月4日 11時) (レス) id: 1df8178e6c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かえこ x他1人 | 作者ホームページ：ホームページ?ﾅﾆｿﾚｵｲｼｲﾉ?
作成日時：2020年5月23日 21時
