執心流浪 ページ13
男が目を覚ましたのは、それから一日後。Aと亜噂は、宿の空き部屋に泊めて貰う間、男の手当てを行っていた。
「……どこだぁ?…ここは……」
『目を覚ましたか。』
Aと男の目が合う。男はAと亜噂を警戒しているようだった。
『落ち着け。私達は敵じゃない。』
「……信用できるかよぉ……」
間延びした話し方をする男は、亜噂が予想した通りの者だった。男は布団から起き、背中を曲げる。
『…ここは宿だ。道に倒れてたところを、私達が運んだ。』
「へぇ……不運だったなぁ。俺様は助けない方が懸命だったのになぁ…?」
『人を助けて後悔したことは今までになかったものでな。お前は自ら命を断とうとしたのか?』
「んなわけねぇだろぉ?!」
男はヒステリックに叫ぶ。Aはこの男からにじみ出る嫌な空気を感じていた。
「俺様はなぁ…あの男を殺さなきゃならねえんだよぉ!」
『あの男とは、伊達政宗公のことか?』
「俺様の閻魔帳を見たのかぁ?そうだよなぁ?」
『ああ。見た。』
「だったら分かりますよねぇ?俺様は処刑執行しに行くのでぇ…邪魔ぁ、すんなよぉ?」
Aは、血走った男の目を見る。
狂気と殺意に満ちた目。それに何故か、哀れみを感じさせる。
Aはこの男から感じた嫌な空気が狂気であることを理解した。
あの刃に染み付いた血の臭いの原因も。
『お前、名前は?』
「後藤又兵衛様だぁ…分かるよなぁ?」
「やはり…そうだったし。」
『それで又兵衛よ。お前は政宗公に勝負を挑んだな?だが』
「俺様は負けてねぇ!!」
嗚呼、やはりそうだ。こいつは受け入れるということが出来ないんだ。
又兵衛に何があったかはAには分からない。けれど、何かを拒絶していることは分かった。
『………。』
「……おい、俺様の奇刃と閻魔帳、帰してくれませんかぁ?」
『ああ、あの刃か。ほら。』
大きく湾曲した奇刃を又兵衛に返す。
「……閻魔帳も返せよぉ。」
「A様……。」
亜噂は首を横にふる。Aもそのつもりだったため、こくりと頷き返した。
亜噂も、察したらしい。
『あれは返せない。』
「……はぁぁ?」
又兵衛の目の色が鋭く変わる。
やはりその目には、狂気と殺意しかない。
『あれがあっては駄目だ。あれはお前を呪っているぞ。』
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らん(プロフ) - おもしろかったです!やっぱり佐助は良い奴(*´ω`*) (2020年8月15日 23時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - らんさん» それは次のお話で明らかになりますよ!今回もコメントありがとうございます! (2020年8月15日 18時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - お久しぶりです!面白かったです! 猿飛佐助は、今後仲間に入りますか?!(ネタバレすみません) (2020年8月15日 8時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - かえこ(弟)さん» ありがとう。お前は早く勉強しろ? (2020年8月4日 11時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(弟) - 面白かったです マタオネガイシマス (2020年8月4日 11時) (レス) id: 1df8178e6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえこ x他1人 | 作者ホームページ:ホームページ?ナニソレオイシイノ?
作成日時:2020年5月23日 21時