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人形 ページ35

「一寸待ち給えよ」

抗争の中を堂々と歩く沙羅に太宰は声を掛ける。

沙羅の纏う殺気とは違う肌を刺すような気に太宰も自然と後ろにつく。

肩に手をかけようとするが、まるで後ろにも目があるかのように交わされる。

「代わり無いわ。

見た目は包帯だらけで木乃伊だし、どうせ中身も腐りきった木乃伊なのでしょう?」

それだけ云うとまた足を早めて歩き出す。

「なぜ君は我々に此の情報を渡した?」

外套のポケットから取り出した紙をヒラヒラさせて太宰は問う。

「私は貴方達に情報なんて渡してないわ」

太宰はクスリと笑って続ける。

「じゃあ質問を変えよう。

なぜ君は我々に此の依頼をした?」

足を早め、沙羅の横に並ぶ。

そして横から顔を覗き込む。

鬱陶しそうに沙羅は顔をしかめ、溜め息を吐く。

「そうすることを彼女が望んでいるから」

「彼女とは?」

「囚われの人」

「その子は赤毛の密網の米国人の子かい?」

沙羅は黙って頷く。

「なぜその子は君がこうすることを望んでいる?」

「彼女が彼に恋をしたから」

「は」

真顔で云う沙羅に太宰は驚き固まる。

沙羅はちらりと太宰を見ると気にせず歩みを進める。

「そろそろつく。

多少の誤差はあるけど」

沙羅のその先の台詞は突然の爆発音によってかき消された。

爆風によって敦とQの人形が飛ばされてくる。

敦は目の前に沙羅が居るのを見ると、驚きに目を見開く。

それと同時に沙羅の目がQの人形に向いていると判ると、取られないように手を伸ばす。

だが落下し、ガソリンによる爆発を間近に受け、吹き飛ばされ、足を破壊された敦には抗う術がない。

意識を何とか保っていると云う状態だ。

沙羅は人形を拾うと後ろに向かって放り投げる。

その人形を爆発による煙の中から現れた人物が受けとり、無効化する。

「もう、危ないじゃあないか。

此の煙によって視界が悪いのだから受けとり損ねたらどうする気なんだい」

「太宰さん・・・!?

じゃあ彼女は太宰さんに」

敦はそう呟いて沙羅を見る。

「居ない?」

先刻まで居た場所に沙羅はいなかった。

「ありゃま。

聞きたいこと未だあったのに」

太宰はおどけて云う。

その上から本が降ってきた。

異能空間に潜んだ沙羅が落としたものだ。

落ちされた本を見て敦は降ってくるであろう銃弾を思い出す。

太宰はそれらを飽和チャフで撃てないようにし、無事横浜焼却作戦第一段階は失敗させられた。

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笹山花音(プロフ) - きなこさん» 最後まで読んでくださり、有り難う御座いました!大好きとは、嬉しい限りです。応援有り難う御座いました! (2017年8月21日 11時) (レス) id: 2d1a61fd05 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ(プロフ) - 完結、おめでとうございます! この作品大好きでした。なので、ちょっと寂しくなりますね。これからも創作活動、頑張って下さい! (2017年8月20日 19時) (レス) id: b7dbad87d7 (このIDを非表示/違反報告)
笹山花音(プロフ) - ルルさん» 御指摘と感想有り難う御座います。直しましたが、此れで宜しかったでしょうか? (2017年7月20日 14時) (レス) id: 2d1a61fd05 (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - 何度もすみません。時間の辺りから名前が沙羅のままになってます。 (2017年7月20日 14時) (レス) id: 622016f6ff (このIDを非表示/違反報告)
ルル(プロフ) - タイトル入れ忘れてました。言語の所です (2017年7月20日 14時) (レス) id: 622016f6ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:笹山花音 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年5月19日 21時

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